UNFPA「世界人口白書」公表:約5人に1人が望みどおりの子どもを持てない。背景に経済的問題とジェンダー不平等

UNFPA(国連人口基金:United Nations Population Fund)は、性と生殖に関する健康を推進する国連機関です。すべての妊娠が望まれ、すべての出産が安全に行われ、そして若者の可能性で満たされた世界にするために活動し、1978年以来世界人口白書を毎年刊行しています。UNFPAは、2025年6月10日、「世界人口白書2025」を公表しました(プレスリリースは≪コチラ≫です。)。

UNFPAが14カ国(日本は含まれていません。)の約1万4000人を対象にして行った調査によると、5人に1人が「自分が望む数の子どもをもつことができない」と回答しました。その理由として、子どもを望む人のうち半数以上が、雇用や住宅などの経済的な問題が望む数の子どもを持つことの妨げになっていると答えました。他に、健康上の理由、気候変動や戦争、育児負担の不平等を挙げました。

白書は、出産祝金や出生率目標のような、出生率低下に対し単純化された対策は多くの場合効果が乏しいとします。一方、強制力を伴う対応は人権を侵害するおそれがあると警鐘を鳴らします。そうした対策の代わりに、手頃な価格の住宅提供、適正な労働環境、育児休暇、リプロダクティブ・ヘルスサービスと信頼できる情報へのアクセスに対する十分な投資などを通じて、人々が自由に、誰と、いつ、何人の子どもを持つかを決定できるようにすることを、各国政府に強く求めています。また、LGBTQI+や独身の人々など多様な形態の家族の存在を認め、親になる権利を拡大することも必要としています。

白書は、家族に関する選択肢を妨げている様々なジェンダーの不平等に取り組むよう求めています。改善を要する具体例を挙げています。「女性が出産などにより職場で退職を迫られたり、キャリアの向上をはばまれたりする慣習」「男性のための有給の育児休暇の欠如と、育児に従事する父親に対するスティグマ」「保育料の負担が大きいこと」「避妊、中絶、不妊治療を含むリプロダクティブ・ライツに制限があること」「若い世代が持つジェンダー観の相違から、婚姻数が減っていること」

白書は、「子どもを持つことを望む多くの人々が、自分の望む数の子どもを持つことができないでいる。しかし、それは親になることを拒んでいるからではなく、経済的・社会的な障壁が原因です。」としています。経済的障壁と社会的障壁(ジェンダー不平等)だというのです。わが国にも当てはまる意見といえます。