日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会:若者はヘッドホン・イヤホン難聴のリスクにさらされている

一般社団法人日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、子どもの難聴予防のために、ヘッドホン・イヤホン難聴に関する資料を作成して、学童期からの啓発活動に取り組んでいます。同学会は、2025年12月17日、「知らないうちに進行するから怖い!?ヘッドホン・イヤホン難聴とは?」を公表しました。学校現場では本資料を活用して難聴予防にお役立てください、と呼びかけています(資料は≪コラ≫です。)。

【今、世界中で若者の難聴が危惧されている】2019年3月、世界保健機関(WHO)は「安全なリスニングに関する国際基準」を発表しました。その中で、世界の12~35歳の若年層のうち約11億人が、携帯型音楽プレーヤーやスマホの使用、クラブやライブなどの大音量環境により、騒音性難聴のリスクにさらされていると警告しました。また、日本でもここ10年で10〜30代の聴力が低下傾向にあると報告されています。その主要因が、スマホなどでヘッドホンやイヤホンを使って「大きな音を長時間、繰り返し聞く」ことによるヘッドホン・イヤホン難聴です。

【自覚がないまま、ゆっくり聞こえにくくなる】ヘッドホン・イヤホン難聴は、ある日突然聞こえなくなるわけではありません。大きな音を長時間聴く習慣を積み重ねるうちに、何年もかけてゆっくりと聞こえにくくなっていきます。そのため、自分では自覚しにくく、「聞こえにくい」と感じたときには進行していることも少なくありません。一度失った聴力は二度と元には戻りません。

【なぜ難聴になるの?】音とは、空気の振動です。私たちが「聞こえる」と感じるのは、内耳の蝸牛という器官の内壁にギッシリと並んでいる約2万個もの「有毛細胞」が、毛先で振動をキャッチして電気信号に変換し、神経を経て脳に伝えているからです。ところが、有毛細胞は非常に繊細です。大きな音に長時間さらされると、疲れ果てて傷ついたり、毛が抜け落ちたりして、音の振動をキャッチできなくなります。

【ヘッドホン・イヤホン難聴にならないための許容音量・時間は?】ヘッドホン・イヤホン難聴のリスクは、「音の大きさ(音圧)と曝露時間」で決まります。WHOは、成人の場合80dBで1週間あたり40時間、若年者(15〜34歳)の場合は75dBで40時間が、難聴にならないための許容基準としています。ただし、どんなに大きい音を聞いても40時間未満なら安心、というわけではありません。

【耳にやさしいヘッドホン・イヤホンの使い方】音量を上げすぎない・ノイズキャンセリング機能付きのイヤホンを使う・音量を制限(ボリュームリミッター)するアプリを使う・定期的に耳を休ませる、というポイントが挙げられています。