国立成育医療研究センター:コロナ禍前に比較し、子どもの自殺願望2倍

国立成育医療研究センター(所在地:東京都世田谷区)は、新型コロナウイルス感染症流行下の子どもの心の実態調査を行い、2025年11月27日、その結果を公表しました。調査は、希死念慮・自殺企図・神経性やせ症の3点を理由に2019年4月1日~2025年3月31日に初診外来・入院した20歳未満の患者に関するアンケートを、全国31カ所の協力病院を対象に実施しました(結果は≪コチラ≫です。)。

自殺企図は、自らの行為が自分を死に至らしめることをある程度予測した上で、実際に行動を起こすことです。希死念慮は、「死にたい」と積極的に自らの死を考えたりすることに限らず、「苦痛から解放されて楽になりたい」「消えてしまいたい」などと思うことも含みます。神経性やせ症とは、摂食障害の一つで、極端に食事制限をしたり、食事後に吐き出したり、過剰な運動を行うなどして、正常体重より明らかに低い状態になる疾患です。

【希死念慮】入院した人は、2019年度の62人から2024年度は111人へと1.8倍になりました。初診外来も、2019年度の110人から2023年度の194人に増加しました。2024年度は166人とやや減少しましたが、2019年度に比べて1.5倍となりました。

【自殺企図】入院した人は、2019年度の40人から2024年度は85人へと2.1倍になりました。初診外来も、2019年度の36人から2024年度は82人へと2.3倍になりました。

【神経性やせ症】入院した人は、2019年度は121人でした。2022年度の189人に増加した後、徐々に減少したものの、2024年度は168人で1.4倍となっています。初診外来は、2019年度の203人から2024年度の297人へと1.5倍になりました。

【男女割合】希死念慮、自殺企図はいずれも男性より女性が多くなっています。神経性やせ症はもともと女性が圧倒的に多かったですが、男性はこの5年間で3倍弱増えました。

【神経性やせ症のコメント】子どもの神経性やせ症を診察できる医療機関の拡充、入院病床数の確保が求められます。神経性やせ症は、本人が病気を否認して医療機関の受診が遅れることがあります。子どもが食事をどれくらいとれているかや体重の変化に家族や教育機関が気を配り、深刻な状態になる前にかかりつけ医を受診することが必要です。

【希死念慮・自殺企図のコメント】子どもから「死にたい」と言われたときには、まずは落ち着いて、ゆっくりと時間をとって、その子どもの話に耳を傾けることが大切です。子どもをサポートする専門家にも仲間になってもらいたいと伝え、相談機関、医療機関などへつなげていくことが必要です。子どもは、体も心も成長段階であり、大人と同じ体格になっていたとしても心は未発達であるとされています。子どもたちは自分の心の状態や問題について認識し、言語化することが難しいため、周囲にいる大人や友達が、日々の様子(食欲不振、不眠、集中力の低下、感情の起伏の変化、やる気の低下、成績の低下など)の変化から、声かけや状況を聞く、悩みや気持ちに寄り添うことが大切です。調査から希死念慮・自殺企図の患者数が高止まりし、国の調査でも自殺者数が増加していることから、さらに多くの子どもたちが何らかのリスクを抱えていると考えられ、子ども達への自殺予防に関する対策および支援が早急に必要と考えられます。