こども家庭庁:いじめの重大化を防ぐための留意事項

こども家庭庁は、2025年11月21日、「いじめの重大化を防ぐための留意事項集」を公表しました(資料は≪コチラ≫です。)。

2023年度の「いじめの重大事態」は1306件で過去最多でした(関連記事は≪コチラ≫。なお、2024年度は1405件で、最多を更新しました。≪コチラ≫です。)。1306件のうち、学校側がいじめとして認知していたものが816件(62.5%)、いじめの認知はなかったが、いじめに該当し得るトラブルの情報があったものが222件(17.0%)ありました。これらは、学校側が、いじめ又はトラブルとして認知していた事案が重大化したものと言えます。そうすると、仮に認知した時点で適切に対応していれば、重大事態に至らなかった可能性があります。そこで、何故いじめが重大化したのか、どうすればいじめの重大化を止められたのかという問題意識から、本資料が作成されました。いじめの重大化を防ぐための対応として、次のような指摘があります(これが全てではありません。)。

【児童生徒の言葉の聴き取りと深い理解に基づく対応】児童生徒からいじめやトラブルの訴えがあったり、いじめアンケートに記載があったりしたときは、まずはしっかりと当該児童生徒の話を傾聴することが必要。その上で、「学校生活においてよくあること」「児童生徒同士で解決可能なこと」と先入観で決めつけるのではなく、既に深刻な状況に陥っている可能性もあることを念頭に、児童生徒が置かれている状況を理解しながら対応策を検討することが重要である。

【言葉以外のサインの察知】児童生徒の「大丈夫」「何でもない」という言葉の裏に、児童生徒が真に伝えたいと思っていることが隠れていないか、本音を言語化できていないのではないかなど、立ち止まって考えることが必要である。また、SOSを言葉で表現できない児童生徒もいるため、本人の声のトーン、表情、態度、体調、食欲などに注意し、普段の様子と異なる場合には声掛けを行ったり、保護者と連携したり、学校全体で情報共有を行ったりすることが重要である。

【児童生徒が傍観者にならないための環境づくり】いじめを見て見ぬふりすることで、いじめに暗黙の了解を与える「傍観者」が、いじめをエスカレートさせる場合がある。また、SNSによるいじめを教職員が把握することは難しく、この領域でのいじめに気づいた児童生徒がどのような行動をとれるかは特に重要となる。このため、まずは児童生徒と共にいじめの定義・具体例を確認した上で、いじめに気づいたときに何ができるか議論して考える機会を設けたり、いじめを発見したら教職員に知らせるよう呼びかけたりすることが有効である。また、その前提として、教職員は、児童生徒との信頼関係の構築に努めるとともに、声を上げた児童生徒の秘密を守るなど相談しやすい環境を整える必要がある。さらに、普段から集団全体にいじめを許さない気運醸成を図るなど、児童生徒が傍観者にならない環境をつくることが必要である。