日本看護協会:2026年度の診療報酬改定を待たずに、2025年度の補正予算で医療機関へ経営支援を

医療機関は、私たちにとっても子どもにとっても必要にして欠くべからざる社会インフラです。ところが、国公私立の大学病院が過去最悪の赤字を計上するなど、医療機関は物価高騰の中で深刻な状況を迎えています。多数の看護師を組織している公益社団法人日本看護協会は、2025年10月8日、政府に対し、「地域の医療・看護を守り抜くために医療機関等への財政支援を」と訴えました。そこには、進まない看護師の賃上げの実情や医療機関の現状が述べられています(ニュースリリースは≪コチラ≫です。)。

厚労省のデータによると、看護師の給与は、20歳代は全産業労働者(大卒)を上回るものの、30歳代で逆転し、その後は格差が広がっています。看護師の就業者数が最も多い40歳代後半では、夜勤手当等を含めても、全産業労働者と比べて9.5万円の差が生じています。そして、2023年度と2024年度を比較すると、40歳代以降の差は一層拡大しています。

2022年以降、全産業の賃上げ水準が高まっています。ところが、医療・福祉分野では賃金の改定率が追いついていません。2024年度の診療報酬改定において「ベースアップ評価料」が新設されました(これを簡単にいうと、看護師・薬剤師などの賃上げ実施のための点数)。しかし、「ベースアップ評価料」を算定している医療機関に勤務する看護師に対し、賞与総額のアンケート調査をしたところ、前年と比較して27.5%が減った、32.7%が変わらない、と回答しました。すなわち、月額給与が上がっても、賞与の引き下げや据え置きにより、処遇改善は進んでいないことが判明しました。

病院勤務の看護師の夜勤手当額(夜勤1回あたり)は10年以上、ほとんど上がっていません。9割以上の病院で、深夜時間帯の割増賃金分と夜勤手当を支給していますが、夜勤手当を支給できず、深夜の割増賃金のみを支給している病院も131施設(4.4%)存在しています。

このままでは、看護師が医療業界から流出する恐れがあります。いまだかつてない、医療・看護の危機的状況を打破するためには、医療機関や訪問看護ステーションが賃上げを行うことのできる原資の確保が不可欠です。いま、手を打たなければ、地域の医療提供体制は守れません、と訴えています。日本看護協会は、政府に対し、①2025年度の補正予算での物価高騰・賃金上昇に苦しむ医療機関への経営支援、②2026年度の診療報酬改定での十分な改定率の2点を要望しています。