一般社団法人による消防庁のデータ分析:故意の自損行為による救急搬送率は、若者層が上昇し、特に女性の方が高い
消防庁には、救急車で救急搬送された全国の傷病者のデータが収集されています。そのデータには、傷病者の年齢や性別、事故種別、初診医による重症度の評価などの情報が記録されています。事故種別には「自損行為」の分類項目があり、これは「故意に自分自身に傷害等を加えた事故」と定義されています。したがって、「自損行為」の情報には、自殺死亡事例のほかに自傷や自殺未遂事例が含まれており、不注意による自損事故は除かれています。東京都千代田区に本部を置く「一般社団法人いのち支える自殺対策推進センター」は、自殺の調査や支援を行っていますが、2016年~2023年(8年間)の消防庁のデータを用いて「自損行為」の情報を分析し、2025年9月10日、分析結果を公表しました(分析結果は≪コチラ≫です。)。
自損行為による救急搬送者数は、2018年の3万5156人を底辺にして2019年以降増加し、2023年には4万2977人に達しました。2023年は、1日平均にすると118人が自損行為により救急搬送されていました。
2016年~2023年の自損行為による救急搬送率(人口10万人あたりの救急搬送者数の割合)の増減を年齢別にみると、40歳以上の年代ではほぼ横ばいでした。ところが、若者(0~19歳、20~39歳)の救急搬送率は上昇していました。特に、0~19歳は、2016年~2023年の間に 2.5倍に増加しました。
2016年~2023年の自損行為による救急搬送率の増減を性別にみると、0~19歳、20~39歳ともに、男性よりも女性の方が救急搬送率が高くなっていました。しかも、近年の自損行為の救急搬送率の増加傾向も、男性よりも女性の方が顕著でした。
2019年~2023年の統計に基づいて、初診医による重症度の評価を年代別にみました。0~19歳、20~39歳は中等症・軽症の割合が比較的大きく、年代が上がるにつれて死亡・重症の占める割合が大きくなっていました。
同センターは、「自傷・自殺未遂者への支援や、そのための政策的な枠組みの構築に向けて、引き続き取り組んでいく必要がある」と述べています。