文科省の特別部会:学習指導要領改訂に向けた論点整理の素案を示す
「学習指導要領」は、小中高校などの学校で教える教科の内容や目標を定めた法的文書です。文科省に置かれた中央教育審議会の特別部会(初等中等教育分科会・教育課程部会・教育課程企画特別部会)が文科大臣の諮問を受けて答申を行い、およそ10年ごとに改訂されてきました。
特別部会は、2024年12月に文科大臣から諮問され、2030年度以降の学習指導要領の改訂作業を進めています。特別部会は、2025年9月5日、省内で会議を開き、学習指導要領の改訂に向けたこれまでの議論の論点を整理した素案を示しました(素案は≪コチラ≫です。)。
第1章「次期学習指導要領に向けた基本的な考え方」では、①「主体的・対話的で深い学び」の実装(Excellence)、②多様性の包摂(Equity)、③実現可能性の確保(Feasibility)の3つを基本として、これらを三位一体で具現化するとしています。分かりづらいのですが、②は多様な子どもの個性や特性を開花させる教育の実現を目指し、③は教師の過度の負担を避け実現可能な制度とすることです。その上で、生涯にわたって主体的に学び続け、多様な他者と協働しながら、自らの人生を舵取りすることができる民主的で持続可能な社会の創り手をみんなで育む、とまとめています。
第3章「多様な子供たちを包摂する柔軟な教育課程の在り方」では、検討の前提として、小学校の教室(35人学級)を描いています。「特異な才能のある子供 0.8人2.3%」「家にある本の冊数が少なく学力の低い傾向が見られる子供 12.5人35.6%」「学習面又は行動面で著しい困難を示す子供 3.6人10.4%」「不登校 0.7人2.1%」「不登校傾向 4.1人11.8%」「日本語を家であまり話さない子供 1.0人2.9%」。その上で、義務教育段階では、授業時間数の一層の柔軟化を図り、特別な教育課程を編成可能にしたり、学年区分に囚われず教育課程を編成したりする必要があるとしました。学校の判断で、特定教科の授業時数を削減可能とする「調整授業時数制度」の導入も提案しています。高校段階では、必履修を含めた教科・科目の柔軟な組み替え、標準単位数の一層弾力的な運用、週当たりの授業コマ数の柔軟な設定を打ち出しています。
第4章「情報活用能力の抜本的向上と質の高い探究的な学びの実現」では、小学校の総合的な学習の時間に「情報の領域(仮称)」を付加しつつ、中学校は情報技術に関連する内容を強化した「情報・技術科(仮称)」を新設し、それらを踏まえた高校情報科の充実を図る、としています。
今後の議論は、教科・科目ごとに設けられたWGに移り、2026年度中に中教審としての答申をまとめます。新しい学習指導要領による授業は、小学校が2030年度、中学校が2031年度、高校が2032年度以降となる見込みです。