思春期のオンラインゲームの不適切利用はメンタルヘルスの不調に。注意欠如・多動傾向はそのリスクを高める。医療研究チームの分析から
インターネットに接続できるゲーム機やスマホが普及し、ほかの人と手軽に対戦できるオンラインゲームにのめり込む子どもや若者が増えています。オンラインゲームは、楽しく遊べているうちはまだ良いのです。ところが、ゲームを中断するといらいらする、プレイ時間を減らすことができない、嫌な気分のときにプレイする、学業や人間関係に支障をきたす、のめり込みを隠すために嘘をつく、というような状態に陥る場合があります。このような状態でプレイすることをオンラインゲームの不適切利用と呼びます。
思春期にこうした不適切な状態でオンラインゲームを利用すると、抑うつ・不安・精神症・幸福度低下のメンタルヘルスの不調につながることが、国立精神・神経医療研究センターと東京都医学総合研究所などの医療研究チームによって確認されました。成果は専門誌に発表されるとともに、2025年8月8日、一般に公表されました(公表文書は≪コチラ≫です。)。
過去の研究でも、オンラインゲームの不適切利用とメンタルヘルス不調の相関関係は示唆されていました。しかし、「因果関係」を説明できる研究は限られていました。そこで、因果関係を推定できる厳密なデータ解析を行い、思春期にオンラインゲームを不適切利用すると、メンタルヘルス不調のリスクが高まるかどうかを検証しました。
研究チームは、2002~04年に生まれた東京都内の3171人を10歳の時から追跡しました。そして、「12歳時点での注意欠如・多動」、「14歳時点でのオンラインゲームの不適切利用の状況」、「16歳時点での抑うつ・不安・精神症・幸福度低下の4つのメンタルヘルス状態」を、国際的な指標などに基づき評価しました。
分析の結果、オンラインゲームの不適切利用が、2年後の抑うつ・不安・精神症・幸福度低下のリスクを高めることが示されました。また、注意欠如・多動は2年後のオンラインゲームの不適切利用につながり、オンラインゲームの不適切利用はメンタルヘルスの不調につながることも示されました。
今回の知見は特に注意欠如・多動傾向をお持ちの方にとって重要であり、オンラインゲームの不適切利用を控えることでメンタルヘルスの安定につながる可能性が示唆されます。オンラインゲームを楽しくプレイできているうちは良いですが、上記のような不適切な傾向が出てきたら、適切なサポートを受け、オンラインゲームから離れられるようにするなどの対策が重要と考えられます、としています。