警察白書:全国の警察で、子どもからの代表者聴取(司法面接)に関するAI訓練ツールを2025年8月から運用開始へ
子どもが犯罪の被害者だったり目撃者だったりすることは世の中でいくらでもあることです。このような場合、警察や検察は子どもから事情聴取をしなければなりません。また、子どもが家庭で児童虐待を受けていた場合には、児相は子どもから事情聴取をしなければなりません。こうした子どもからの事情聴取については、子どもの負担軽減と供述の信用性確保の2つの観点から特段の注意を要します。成人に対するのと同じ手法での聴取では弊害が大きすぎるのです。政府は、警察、検察及び児相が別々の機会に何度も繰り返して聴取するのではなく、それらの関係機関が協議し、その3者の代表者が子どもから1回で事情を聴取する代表者聴取(司法面接ともいいます。)の取組を推進しています(関連記事は≪コチラ≫です。)。
代表者聴取(司法面接)においては、取調官による誘導や暗示によって子どもの記憶や証言が変容されたり汚染されたりすることがないよう、子どもの心情をよく理解した上で、誘導や暗示に頼らない適切な問いかけをしなければなりません。
警察庁が2025年7月29日に公表した2025年の警察白書では、代表者聴取(司法面接)について次のように述べています(白書の該当部分は≪コチラ≫の30ページです。)。「警察では、児童の心情や特性に配意した聴取技法を習得させるため、ロールプレイング方式による教育訓練を行っているところであるが、より実務に近い訓練が求められている。そこで、警察庁では、令和5年度から令和6年度にかけて、BRIDGE(利用者がAIに対して指示を与え、望ましい出力を促すための命令文、のこと)の対象施策としてAIを活用した訓練ツールを開発した。同訓練ツールは、児童のアバターとの対話により実際の児童との受け答えを模した訓練を可能にするものであり、令和7年度から全国警察での運用を開始することとしている。」警察庁が開発したAIを活用した子どものアバターとの対話の訓練ツールは、2025年8月から全国の警察で運用が始められることになりました。
もっとも、警察の任務は、犯罪の捜査です。警察は、児童福祉や児童心理のトレーニングは受けていませんし、犯罪捜査の成果をあげるために誘導や暗示に頼る可能性があります。そのような犯罪捜査を職務とする警察は代表者聴取(司法面接)になじまない可能性があります。児童福祉・児童心理に精通した中立的な立場の人物が担当するのが適切という意見もあります。