注目度の高い論文数、日本は過去最低の3年連続13位。文科省の科学技術指標2025から

文科省に置かれた科学技術・学術政策研究所は、科学技術政策について調査・研究を行う機関として1988年に発足しました。科学技術・学術政策研究所は、2025年8月8日、「科学技術指標2025」を公表しました(報道発表資料は≪コチラ≫、昨年の記事は≪コチラ≫です。)。このテーマは、子ども・若者の将来の人生や幸せの問題につながる可能性があり、取りあげることにしました。

発表された論文の数に基づいて各国の科学研究力が比較されることがあります。各国の自然科学系の科学論文の総数(2021~23年平均)を比べると、わが国は中国、アメリカ、インド、ドイツに次ぎ、昨年同様に世界で5位でした。

一方、他の研究者による引用が多ければ多いほど内容が注目され質が高い論文と認められ、「注目度の高い論文」とされます。他の研究者の論文に引用された回数が各年各分野の上位10%に入った論文を「Top10%論文」といいます。このTop10%論文の数では、わが国は3447本で、中国、アメリカ、イギリス、インド、ドイツ、イタリア、オーストラリア、カナダ、韓国、スペイン、フランス、イランに次ぎ13位でした。1位の中国は7万3315本、2位のアメリカは3万2781本、12位のイランは3619本でした。Top10%論文数の日本のシェアは、1980年代から1990年代後半にかけて緩やかに増加し、3位まで上昇しましたが、その後は低下してきました。2019年には韓国に抜かれて主要国中最下位となり、3年連続で過去最低の13位が続いています。世界的な物価高騰に対して国内の研究費の増額が追い付かず、研究環境の悪化が背景にあるとみられます。

日本の大学部門の研究開発費は、2000 年代に入ってからほぼ横ばいに推移していましたが、2021年から微増となりました。これに対し、2010年を基準とした研究用の消耗品の単価(1Kg当たりの価格)を見ると、ヘリウムと試薬類は2010年代後半に入ってからの単価の上昇が大きくなっています。2010年と2024年の単価を比較すると、ヘリウムは7.2倍、試薬類は4.6倍となっています。このように研究用の消耗品の単価は2010年基準で見ても大きく増加しています。

こうしてみると、わが国では研究予算の増額分を超える消耗品その他の研究費用が発生しており、研究の成果が十分に発揮されていない状況が伺えます。