こども家庭庁は、母子家庭の母・父子家庭の父の自立支援策の2023年度の実施状況を公表しました

ひとり親世帯への支援は、もともとは1964年に成立した「母子及び父子並びに寡婦福祉法」が定めていました。福祉的な援助を行うことに支援の主眼が置かれていました。しかし、それだけでは十分でないと認識され、2002年からは、ひとり親世帯の就業を支援し自立を目指す総合的な方針が打ち出されました。施策の重点は「子育て・生活支援策」「就業支援策」「養育費の確保策」「経済的支援策」の4本柱となり、施策の幅が大きく広がりました。2012年には「母子家庭の母及び父子家庭の父の就業の支援に関する特別措置法」という法律が作られました。その4条では、毎年1回就業の支援に関する施策の実施の状況を公表するよう政府に義務づけました。こども家庭庁は、2025年3月26日、「令和5年度 母子家庭の母及び父子家庭の父の自立支援施策の実施状況」を公表して、2023年度の状況を明らかにしました(公表文書は≪コチラ≫です。)。

ひとり親世帯への支援策は多岐にわたっています。公表文書は、自立支援策の全体を幅広く取り上げ、それぞれの事業の意義や実施状況を説明しています。項目には、「就業支援につながる施策等(就業相談・就職支援)」「就業支援に関する施策等(職業訓練)」「就業支援に関する施策等(雇用・就業機会の増大)」「生活支援に関する施策」「養育費の確保策」「自立を促進するための経済的支援」があります。

このようにひとり親世帯の支援制度には多種多様なものがあります。しかし、各制度を詳細かつ正確に把握するのは容易ではありませんし、窓口も不統一です。その相談にあたるのが、自治体に配置されている母子・父子自立支援員です(以下では支援員といいます。)。2023年度の状況が公表されており、支援員は全国に1797名が配置され、そのうち常勤は468名にとどまり、非常勤が1329名に及びました。2023年度の相談件数は61万8910件でした。支援員1名あたりの平均は344件となります。こども家庭庁による年1回の研修会があり、相談支援ハンドブックが2025年3月に公表されましたが、相談に必要な人材の在り方は未整理で、相談から支援の実施及び継続支援に至る流れも体系化されていないため、相談業務は支援員個人の力量や努力に依存しがちです。支援員による相談の質の向上を図ることが重要であるという調査結果もあります(関連記事は≪コチラ≫、ハンドブックの記事は≪コチラ≫です。)。

また、市町村による実施状況の一覧表が整理されています。しかし、自治体によって実施事業にばらつきが見られます。全国どこであってもひとり親家庭が同じサービスが受けられるよう均質化を図ることが求められているといえます。