こども家庭庁は、「特定登録取消者」の保育士のデータベースの活用を求める通知を自治体に発しました
保育士は、児童を守り育てる立場にあります。しかるに、保育士が児童にわいせつ行為を行い、児童の尊厳と権利を著しく侵害し、トラウマや心身に重大な影響を与える事案が後を絶ちません。このような案件が放置されて良いはずはありません。その対策として、2022年に児童福祉法の改正が行われました(同法18条の20の4)。
【データベース(保育士特定登録取消者管理システム)の整備】児童にわいせつ行為を行った保育士は、都道府県知事(政令市長を含む。)によって保育士の登録を取消されます。改正法では、児童にわいせつ行為を行ったことにより保育士の登録を取り消された者を「特定登録取消者」と呼ぶことにしました。そして、国が整備する「保育士特定登録取消者管理システム」という名称のデータベース(DB)に「特定登録取消者」を登録するとともに、保育士を採用しようとする者にDBの活用を義務づけました。DBに記録される項目は、特定登録取消者の氏名、生年月日、登録番号、登録日、登録者、取消年月日、取消事由などの情報です。登録された記録は少なくとも40年間は残ります。運用の施行期日は2024年4月1日でした。ところが、運用が始まって1年を経過したのに、このDBの活用が徹底されていません。そこで、こども家庭庁は、2025年7月29日、都道府県及び指定市に対し、「保育士特定登録取消者管理システムの活用の徹底等について(依頼)」を通知し、DBの活用を求めました(通知は≪コチラ≫です。)。
【DBの活用】都道府県知事は、児童にわいせつ行為を行った保育士の登録を取消したときは、その情報をDBに迅速に登録します。他方で、保育士を雇用する者が保育士を採用しようとするときに、そのDBを活用します。活用の具体的な内容は、採用しようとする保育士をDBで検索し、その本人が特定登録取消者であることが判明したときは、採用面接などを通じて本人に経歴等の詳細な確認を行ったり、本人の同意を得て過去の勤務先に事実関係の確認を行ったりするなどして、採用の可否の判断を十分に慎重に行うことを想定しています。
【類似の制度】同様の制度に、児童生徒へのわいせつ行為により処分を受けた幼稚園教諭を含む教員の情報が登録されたDBの活用を義務づけた文科省所管の「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律」があります。保育士はこども家庭庁の、幼稚園教諭を含む教員は文科省の所感であるため、縦割り行政により別々の制度が並立しています(関連記事は≪コチラ≫です。)。