こども家庭庁の「こども誰でも通園制度」、試行自治体の約7割が国の補助金不十分と訴える
「こども誰でも通園制度」が2026年4月1日から全国で始まります。この制度は、親の就労の有無にかかわらず、1ヶ月10時間の枠内で、生後0歳6ヶ月~3歳未満の子どもを保育所、幼稚園、認定こども園などに預けることができるというものです(関連記事は≪コチラ≫です。)。国の「異次元の少子化対策」に掲げる重要政策の一つとして創設されました。根拠法は児童福祉法6条の3第23項の「乳児等通園支援事業」にあり、事業の実施主体は市町村又は認可された民間事業者とされています。
2026年度の本格実施に先立ち、一部の市町村で先行的に試行実施されています。2024年度は、全国の118自治体で試行されました。制度を実施する民間事業者への補助金は、2024年度は子ども1人につき1時間あたり850円で、国が4分の3、自治体が4分の1を負担しました。子どもを預かった実績に応じて事業者に補助金が支給される仕組みです。保護者から徴収できる1時間あたりの利用料は国の要綱で300円程度に設定されました。毎日新聞は、2025年1月下旬~3月、118自治体を対象にしたアンケートを実施し、2025年6月27日、その結果の概要を報道しました(記事は≪コチラ≫です。)。
国の補助金が「足りない」と答えた自治体は81ありました(68.6%)。その理由としては、「国の補助金や保護者の利用料より、人件費や光熱水費が圧倒的に多い状況」(北海道登別市)、「補助金の対象外となる(利用がない)時間帯の人件費が発生し、赤字経営を強いられている」(沖縄県浦添市)が挙げられました。
こども家庭庁は、自治体や現場の声を聴いて、2025年度の補助金を、1時間あたり0歳児1300円、1歳児1100円、2歳児900円に増額しました。しかし、札幌市や愛知県大府市、北九州市などは、それでも十分ではないとしています。少子化の影響で利用児が都市部より少ない地方では、利用実績にかかわらず基本の補助金を支給する仕組みを求める声が根強くあります。
事業者の参入動向にも影響が出ています。「事業者の参入は進まない(一部にとどまる)」と答えたのは65自治体で、半数を超えました。その理由としては、「国の補助額では運営が厳しく、保育士の人材確保ができない」(滋賀県米原市)、「利用者が少なかった時に人件費などが園の負担になり、リスクを負って導入する園は少ない」(栃木県足利市)などが挙げられました。