文科省通知:入学辞退者への私立大学入学金の返還検討を

私立大学に合格して入学金を納付した後に入学を辞退しても入学金は返還されません。私立大学では、試験日程が遅い国公立大学の合否決定の発表前に入学金の納付期限が到来することが多く、入学金を納付した合格者や保護者の負担になっていると国会質問で度々取り上げられていました。加えて、併願が可能な総合型選抜など入試制度の多様化により、入学金を複数の大学に納付する機会が拡大し、家計の負担が重くなっているとの声が上がっていました。こうした状況を踏まえて、文科省は、2025年6月26日、合格者が納付する入学金の負担軽減策を検討するよう全国の私立大学に通知しました(通知は≪コチラ≫です。)。

私立大学に合格すると、合格者は入学金の他に授業料、施設設備費、実習費、学友会費などの学生納付金を納めます。ところが、大学の入学試験要項には「いったん納付された学生納付金は、いかなる事情があっても返還しない。」という定めがあり、以前は入学を辞退しても、これらの学生納付金は返還されませんでした。

ところで、入学金や授業料等を一切返還しないとする入学試験要項の規定は、法的には、違約金の定めの一種と考えられます。こうした違約金の定めは、消費者契約法9条1号によって、「当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害」を超える部分は無効と規定されています。このことが最高裁判所で審理され、最高裁は、2006年11月27日、入学金は返還する必要はないが、授業料等に関する不返還の要項の定めは無効であるので、私立大学は授業料等を返還する義務を負うと判断しました。この判決の後、授業料等は返還されるようになりましたが、入学金は依然として返還されない事態が続いています。

文科省の通知は、2026年度の入学者を選抜する入学試験(2025年度実施の入試)から、入学金の金額の抑制や、入学しない合格者の納付した入学金の負担軽減策に努めるよう求めています。文科省が想定しているのは、①入学金を分割払いにして、入学金の一部を先に納めて残額は入学を決めた後に納付する②入学辞退の時期が早い場合は、追加募集などで辞退者の代わりとなる入学者を見込めるので、納付済みの入学金を入学辞退者に返還する、などです。また、経済的に困難な状況にある受験生に対しては、授業料だけではなく入学金についても特段の配慮に努めるよう求めています。通知には強制力はなく、実際の対応は各大学の判断に委ねられていますが、文科省は積極的な検討を促すとしています。