高層階からの子どもの転落事故を防ぐためのニューヨーク市の取組
消費者庁・消費者安全調査委員会は、米国ニューヨーク市の転落防止対策を視察しました。ニューヨーク市では、高層階の窓に開放制限装置の設置を義務づけ、子どもの転落事故を減らすことに成功しました(資料は≪コチラ≫の添付資料5です。)。
建物の高層化が進んでいるニューヨーク市では、1965~1969年、200人以上の子どもが転落事故により死亡していました。ニューヨーク市は、1972年子どもの転落を防止するため「Children Can’t Fly」というキャンペーンを始め、1976年子どもが居住するマンションの窓に開放制限装置の設置を義務化しました。しかし、当初は実効性に乏しく、1983~1987年の間は100~120件の転落事故が起きました。1986年、マンション居住者に、マンション所有者には開放制限装置の設置義務があることを通知しました。また、マンションの理事会が提訴される裁判事件も起きました。こうして、1987年~1995年、子どもの窓からの転落死亡事故は年0~2件に減少しました。2023年は9件の転落事故があり、死亡事故は2件でした。
開放制限装置とは、窓格子と窓がどの方向にも4.5インチ以上開かないようにする設備で、簡単に外せない構造になっています。非常階段に通じる窓、緊急脱出用の窓、エアコンが設置されている窓を除き、マンションの全ての窓に設置します。マンションの所有者、管理者、賃借人らは開放制限装置を設置しなければなりません。
しかし、米国は州によって法制度が異なっています。高層住宅のない地域では転落の危険性が注目されず、消防活動に支障が生じうるとか、眺望が阻害されるなどの理由から米国全土には拡大していません。
日米の住宅事情の違いをヒアリングしました。主な違いは以下のようなものでした。米国では湿気が少なく、そもそも窓を開放する必要性が低い。米国ではベランダを設置することが少ない。ニューヨーク市の窓は、垂直方向に動く上げ下げ窓が多いが、日本の窓は、水平方向に開け閉めする引き違い窓が多い。米国では、賃貸住宅であっても、住宅に穴を開けることが許容されている。米国では親が必ず子どもの近くにいて、親の監督の下にいるのが前提となっている(子どもを1人にしたら児童虐待で逮捕される場合もある。)。日本では、窓格子は見栄えが悪いとの理由で設置されないことがある。