公益財団法人は、外国の里親制度を調査しました
厚労省の検討会は2017年8月2日「新しい社会的養育ビジョン」を公表し、未就学児の里親委託率75%、学童期の里親委託率50%の目標を示しました(≪コチラ≫です。)。国連が2009年に採択した「子どもの代替養育ガイドラン」では乳幼児、特に3歳未満の子どもは原則として家庭で養育するべきとしています。しかるに、2021年度末の3歳未満の委託率は全国平均で25%、2022年度が25.3%で、実態は目標からかけ離れています。公益財団法人日本財団(本部は東京都港区)は、2025年3月10日、「里親制度の国際調査報告書」を公表しました。調査は、文献調査(独、伊、スウェーデン、英、米国ワシントン州、カナダ ブリティッシュ・コロンビア州、同オンタリオ州)と訪問調査をしました(概要版は≪コチラ≫、全体版は≪コチラ≫、関連記事は≪コチラ≫です。)。
今回調査を行った国では、実親が育てることのできない乳幼児は母子施設、または親族や里親など家庭に措置することが基本でした。施設で養育される乳幼児はごくわずかでした。国ごとに様々な里親の類型があり、ヨーロッパでは親族里親(子どもの知人を含む)、短期里親、長期里親、緊急里親、治療里親、親子里親などがありました。
ヨーロッパでは母子施設がどこの国にもあり、妊娠期からも入居が可能な施設もありました。スウェーデンでは、母親が子どものケアをできるかどうかを調査するために、出産後は母子で母子施設に入所しモニタリングを行い、その後の支援方針を決定する取組みも行われていました。イタリアのミラノ市では、社会的養護が必要な乳幼児の場合には、子どもだけを施設に入所させるのではなく、母子で施設に入所し、母子に対して支援を行うことを優先していました。親子を受け入れる里親である親子里親の制度も、スウェーデン、イタリア、アメリカなどで確認できました。
訪問調査では「里親に対する支援を手厚くすることで、子どもを支えている」という発言が多く聞かれました。特に里親当事者からは「里親同士の横のつながりが非常に重要なサポートである」との声がどの国でも聞かれました。里子を受け入れた場合に里親が育児休暇を取得できる国が大半でした。それ以外にも、里親が休息やリフレッシュし、里子から離れて必要なことをやるための時間を確保できることが非常に重要であるとの声も多く聞かれました。
親族・知人など子どもと関係がある里親に委託した方が、子どもの安定にも育成にも良く、不調も少ないというエビデンスがあることから、親族里親(子どもの知人を含む)を積極的に活用していました。多くの国で、親族・知人の場合には里親になるための要件を緩和し、里親資格がなくても一定の支援を提供するといった取組みを行っていました。