こども家庭庁通知:保護者面会は児相職員同席で。乳児院での殺人事件を受けて

佐賀市内の乳児院で職員が切りつけられて死亡した事件が発生したことを受け、こども家庭庁は、2025年6月6日、一時保護中の子どもと保護者が面会する際、児相職員等が同席するなどの対応をとるよう関係自治体に通知しました(通知は≪コチラ≫です。)。

報道によると、事件が発生したのは2025年5月31日午後5時40分ころのことでした。子どもは、5月12日、児相によって一時保護され、乳児院に一時保護委託されました。その際、外国籍の母は夫と一緒で落ち着いた状態だったため、子どもの入所先を伝えました。ところが、母は翌13日に児相を訪れ「子どもを返して」などと叫び、持参した消毒用アルコールを口にしたため、児相は県警に通報しました。県警は母を保護し、自傷のおそれがあるとして保健所に通報しましたが、保健所は主治医にも話を聞いた上で今回は措置入院の可否を判断するための精神保健指定医の診察は必要ないと判断して母を帰宅させました。児相は子どもへの面会には夫婦が揃っていることを条件としており、母単独では面会できませんでした。しかし、当日は児相に事前の連絡はなく、母が独りで来園しました。母は子どもを取り返そうとしてトラブルになったと見られています。母は乳児院の女性職員を包丁で多数回切りつけるなどし、職員は搬送先の病院で死亡が確認されました。

【子どもの居所の開示について】児童虐待防止法12条3項は、一時保護した子どもの居所を保護者に明らかにしたときに、再び児童虐待が行われるおそれがあり、又は子どもの保護に支障をきたすと認めるときは、児相は子どもの居所を明らかにしないと規定しています。一時保護に当たっては、保護者の状況等を踏まえて、子どもの居所の開示の適否を適切に判断することが明記されています。

【保護者対応について】児相は、連絡窓口となる児相の担当児童福祉司を決定の上、連絡は当該担当児童福祉司が受けることを保護者に伝えることにし、一時保護施設は窓口にならないこととしています。一時保護委託先の児童福祉施設に直接保護者が連絡してきた場合には、児相へ連絡するよう保護者に伝えるとともに、速やかにその状況を児相へ連絡することも明記しています。

【保護者に関する情報の共有について】児相は、一時保護開始の段階で、保護者の細部にわたる情報を一時保護施設に共有するとともに、保護者の状況の変化に応じて随時情報を共有することを徹底すると明記しています。

【子どもと保護者との面会について】面会を全部又は一部認めることが適切と判断し実施する場合、面会中の保護者と子どもの状況観察、並びに突発的な事態に備えるため、必ず児相職員等が同席することとしています。また、安全面の確保等の必要から、一時保護が行われている場所での面会が適当でないと考えられるときには、児相で面会を実施するなど、実施場所や方法について十分に検討した上で対応することも明記しています。もっとも、安全確保の要請から全件の同席は有効な方策であるとしても、現状でも多忙な児相にさらなる過剰業務を課し、これを理由に面会の回数を制限するような結果をもたらすとすれば親子再統合の道筋に支障を及ぼすおそれなしとせず、悩ましいところです。