子どもとのアタッチメントは重要ですが、詳細な理解までには至らず。こども家庭庁の調査から

株式会社NTTデータ経営研究所は、2025年3月、「『幼児期までのこどもの育ちに係る基本的なビジョン』策定後の具体的な取組推進 科学的知見の充実・普及に向けた調査研究(乳幼児との関わり)」の報告書を公表しました。この事業は、こども家庭庁からの委託により行われました(報告書は≪コチラ≫です。)。

【アタッチメント(=愛着)】アタッチメントは、イギリスの心理学者John Bowlbyによって1982年に初めて提唱されました。その後、世界中で研究が行われ子どもの発達に大きな影響を及ぼすことが科学的に裏付けられています。

【本調査の背景】こども家庭庁の政策に「幼児期までのこどもの育ちに係る基本的なビジョン(はじめの100か月の育ちビジョン)」があります。2023年12月22日に閣議決定されました(資料は≪コチラ≫です。)。出生前から幼児期までの育ちには、保護者・養育者とのアタッチメントが重要です。子どもは、アタッチメントを基盤とし、子どもや大人と接し、モノ・自然・絵本・場所等の環境と出会う中で、豊かな「遊びと体験」を獲得する「安心と挑戦の循環」が重要と説いています。そこで、アタッチメントやこれが発達に及ぼす影響に関する科学的知見を体系的・網羅的に調査・整理し、社会に共有することが本調査の背景にあるとします。

【本調査の目的】報告書は2つの目的を掲げます。①アタッチメントに関する、科学的根拠に裏付けられた知見の共有による、社会全体の認識共有、②アタッチメントに関する、政府全体の政策・取組の策定・推進に資する、科学的根拠の提供の2つです。 【本調査の総括】文献を調べると、アタッチメントと発達の関連については、母親をアタッチメント対象とした研究において、認知的・社会的・心理的発達との関連が一貫して示されていました。安定したアタッチメントは言語能力、感情調整力、共感性の向上と関連し、不安定なアタッチメントは外在化・内在化行動の増加と関連することが明らかとなりました。アタッチメントの安定性には、妊娠中の親の態度、育休の長さ、保育環境、地域との関わりなど多様な要因が影響を及ぼす可能性があります。しかし、アタッチメント形成のメカニズムや発達への影響に関する知見には未解明な点が多く、今後の研究の発展・確立が求められるとします。保育現場からのヒアリングでは、保育者によるアタッチメントの認知度は高かったものの、詳細の理解度は高くなく、業務における優先度は他の業務よりも低いものでした。新たな知見の獲得機会は、書籍や研修の手段による学習方法が多く、手軽さも優先される向きがあり、学術的知識の習得はあまり実施されていません。その一方で、普段の保育業務においてアタッチメントを実感する機会は多く、科学的な裏付けや学術的知見は役に立つと思っている人も多く見られました。