こども家庭庁公表:保育現場での子どもへの性暴力を起こさせないための取組ガイド
保育現場で職員が園児にわいせつ行為をしたという報道が流れることがあります。保育士による園児への性暴力が発覚して保育士がいっせいに退職し、休園した施設もあります。保護者が園などを被告として慰謝料を求める訴訟を起こした事案もあります。その一方で、「自分たちの園では子どもへの性暴力は起こらない」と思っている施設も少なくありません。調査によれば、「うちは3歳未満児しかいないから大丈夫」「女性職員だけの職場だから大丈夫」「今のところ問題は起きていない、対策の必要性を感じません」という声が保育現場から上がる実態もありました。
こども家庭庁は、2025年3月31日、「こどもの人権を守るために 保育現場での性暴力を起こさせないための取組ガイド」を公表しました(ガイドは≪コチラ≫です。)。ガイドは、自分たちの園は大丈夫という思いが危険であり、子どもへの性暴力はどこの園でも起こりうると認識することが重要と説きます。女児のみならず男児も被害にあっています。
保育現場での子どもへの性暴力の特徴は、表面化しづらいことです。複数の園児に対する性暴力が約2年間も発覚せずに続いたケースがありました。理由は、閉鎖的な環境下で加害行為がなされること、子どもが性被害を自覚しづらく被害を訴える能力が未熟なこと、援助者という信頼関係を悪用することです。また、子どもへの性暴力は、いきなり手を出すのではなく、保育士という立場を利用し、優しく接して信頼させる性的手なずけ(性的グルーミング)の手口が用いられることも原因です。
子どもへの性暴力を防ぐ4つのポイントを挙げています。①頑張っても報われないといった満たされない気持ちが、子どもへの性暴力につながる場合があります。忙しい中でも管理職や職員間での声かけを増やし、孤立する職員を出さないようにしましょう(なお、給料のアップその他勤務条件の向上も欠かせません。)。②「触るだけならそんなに傷つかない」という認知の歪みが心理的な抑制を弱めます。子どもの人権を踏まえた望ましい関わり方を話し合い、共有しましょう。③死角の多い場所や一人で保育にあたる時間が長いなどの環境の不良は、子どもへの性暴力のリスクを高めます。対策として、防犯カメラや見通しのよい環境整備により死角を減らし、複数体制で保育を行うなどの内部規則の充実を考えましょう。④子どもが自分の意見を日頃から主張する機会が少なかったり、プライベートゾーンに関する知識がないときは、性被害にあった際に、気づいたりNoと言ったりする可能性が下がります。これらを意識した保育を行い、子どもが性暴力を受けそうになったときに、疑問を持ち、その疑問を大人に伝えられるようにしましょう。