児童相談所の労働環境の改善こそ子どもを守れる土台 その2
千葉地裁は、2025年3月26日、元職員のAさん(31歳)が働いていた千葉県市川児童相談所・一時保護施設の人手不足や長時間勤務による苦痛で退職せざるを得なくなったとして、千葉県を被告として未払い賃金や慰謝料などの支払いを求めていた訴訟で、千葉県に対し、計約50万円の支払いを命じる判決を言い渡しました。
Aさんは、2019年4月1日、意欲をもやして新卒の児童指導員として市川児相に配属され一時保護施設で勤務を始めました。しかし、4ヶ月後の同年7月末にうつ病と診断されて休職しました。2020年2月に一時復帰しましたが、翌月再び休職し2021年11月に退職となりました。
ところで、このHPでは、全国の児童相談所に勤める多数の児童福祉司や児童心理士が定年を迎える前に任意に職場を退職している実態があるというこども家庭庁の公表文書を取りあげたことがありました(その記事は≪コチラ≫、公表文書は≪コチラ≫の52~56ページです。)。
2023年度における児童福祉司の退職者は全国で270人でした。ところが、そのうち、定年退職者は11人だったのに対し、定年退職以外の退職者が225人だったのです。定年退職以外の退職者の割合は83%に達しました。また、全国の児童心理士の退職者は104人でした。そのうち、定年退職者は1人だったのに対し、定年退職以外の退職者が77人もいました。定年退職以外の退職者の割合は74%です。定年退職以外の退職者には自己都合の場合も含まれますので、定年退職以外の退職者の全員が業務に起因するものとはいえません。しかし、相当多数の職員が児相の業務の故に仕事を途中で断念せざるを得ない事態が進行しているのではないかと見られます。
この度の千葉地裁判決を機に、こども家庭庁や都道府県・政令市・児相設置市は、児相の業務の内容を吟味し、必要な予算を増額することなどを考えることが求められます。