全国の教職員不足は少なくとも4739人、現場は限界を迎えている。全日本教職員組合の調査から
全日本教職員組合(全教)という全国規模の教職員の労働組合があります。全教は、2025年1月9日、教職員未配置の実態調査の結果を公表しました。調査の目的は、①教職員未配置、②非常勤の教職員(短時間勤務や時間講師など)の配置の各実態を明らかにし、今後の改善につなげることにあります。調査は2024年10月1日時点の現況を全国の教育委員会や組合員に質問し、回答のあった34都道府県と11政令市の結果をまとめました(記者発表資料は≪コチラA≫、≪コチラB≫です。)。
34都道府県・11政令市における教職員未配置の内訳は下記のとおりで、合計で4739人に達しました(出典は、全日本教職員組合「記者発表資料」2ページ)。調査は2016年から実施しており、今回が過去最多でした。全国に調査が及べば、さらに多くの未配置が判明することでしょう。未配置に対する対応を質問したところ、4739人のうち929人についての回答がありました。「見つからないまま」が365人(39.3%)、「非常勤等で対応」が550人(59.2%)などでした。非常勤等で対応する場合には、授業の穴は埋まりますが、校務分掌・生活指導・部活などの業務は埋まりませんので、常勤の教職員に過重負担がのしかかります。
全教は2024年5月時点でも同様の調査をしました。双方の調査に回答を寄せた30都道府県・8政令市のみを抜き出して比較検討しました。その結果、わずか5か月で約1.38倍もの教職員未配置が起きていました。教職員未配置の状況は悪化しており、しかも深刻さは急激に進行しているとみられます。こうした状況は、教職員を取り巻く環境を悪化させるだけではすみません。学校で学ぶ子どもたちの教育を受ける権利を侵害し、学校生活の乱れや心理面の不安などの悪影響を及ぼすことは明らかです。
教職員から寄せられた自由記載を紹介します。「子どもが先生と話をする時間が減少している。(義務制)」「4月から今も担任不在で、交代で教職員が対応しているために、子どもが落ち着かない。未配置が原因で新たな荒れに発展していく。(小学校)」「担任が代わる代わる別の人がきて不安定(小学校)」「先生がどういう状況なのか生徒に説明するわけにもいかなかったので、3年の1学期の大切な時期に生徒を非常に不安にさせてしまって申し訳なかった。(高校)」「美術の担任が10月から産休に入るが、代替が見つからない。当面、11月以降の2学期の美術の授業はカットし、9月10月の2か月間、美術の授業を倍にして対応したので、美術を授業する分、カットした他の授業もある。その授業は11月以降に設定されていて、学習の進度等が無茶苦茶になっている。(中学校)」「生徒に目が行き届かず、トラブル(ケンカ、異食、ケガ)に対応できない。(特別支援学校)」「途中退職された先生の代わりに、教頭先生が授業を受け持ち、さらに忙しくなって、とても大変そうだった。人が少ない分、分掌や部活など、あらゆる場面で、一人一人の負担が増えた。(中学校)」「未配置の学校では、ドミノ式に病休者が出てくる状態。(高校)」。全教の担当者は「現場は限界を迎えている。教員が心身や時間に余裕を持って授業や学校行事を行えるよう、国は教育予算を増額し、環境を整えるべきだ。」と話しています。