公益財団法人あすのば調査:「子どもの貧困 絶望の連鎖が明らかに」経済的困窮世帯のアンケートから
「公益財団法人あすのば」という法人が東京都港区にあります。公開された定款によると、子どもの貧困の調査研究・提言・支援などを行う目的で2015年に設立されました。同法人は、生活保護世帯や住民税非課税世帯などの経済的困窮世帯の子ども・若者で小中高大学等へ入学し新生活を迎える約2000人に給付金(3~5万円)を毎年支給する「入学・新生活応援給付金」の活動を行っています。同法人は、2023年11月9日~12月4日、その給付金の受給者1万4845世帯を対象に、オンラインと郵送でアンケートを行い、保護者4012人と子ども1862人から有効回答を得ました。アンケートの目的は、経済的困窮世帯の子どもや家庭の状況の把握です。その結果が、2024年11月13日に公表されました。報告書には「子どもの貧困 絶望の連鎖が明らかに」という衝撃的でやりきれないタイトルが付けられています(報告書は≪コチラ≫です。)。
学校があまり楽しくない・全然楽しくないとの回答は、小学生22.8%、中学生29.4%で3割に迫っています。学校の授業の理解度について、いつも分かる・だいたい分かるのは小学生37.4%、中学生16.1%、高校性35.3%にとどまりました。特に中学生で、学校が楽しくなく、授業が分からない生徒の割合が高くなっています。困りごとや悩みごとがあるときに相談できると思う人として「学校の先生」を挙げたのは小学生23.6%、中学生14.5%、高校生13.6%でした。これらから、経済的困窮世帯では、学校を「居場所」として捉えられない子どもが多くみられる、と述べます。また、家庭の貧困が、学校生活の居場所感の剥奪にも関連している可能性が示唆された、とします。
小学生~高校生の合計で、以下の質問について「よくある、ときどきある」と回答した者の割合は、「何でもないのにイライラする」が48.2%、「何となく大声を出したい」が39.2%、「学校に行く気がしない」が38.7%、「孤独を感じることがある」が34.6%、「消えてしまいたい」が17.8%でした。日常的に厳しい精神状態に置かれている子どもの姿が浮かびあがる、と述べています。
小学生の70.7%が、「高校や大学に行きたいと思った人が誰でも行けるしくみ」を求めています。同じように、「教育や進学の費用負担を減らす制度」(中学生72.4%、高校生86.4%、大学・専門学校生 89.9%)、「無料学習塾や習いごとなどの費用負担の軽減」(中学生 60.7%、高校生49.7%、大学・専門学校生43.7%)など、学習やその継続に関する支援を求める声も明らかになりました。経済的困窮世帯では学びたい意欲や機会が剝奪されている、と述べています。
経済的格差が学びや体験の格差につながり、それが子どもの将来の格差につながり、さらにその格差は温存されて次の世代に引き継がれていくという連鎖が見えてきます。国や自治体による子どもの貧困対策の拡充がつよく求められます。