こども家庭庁による「こどもデータ連携」のための実証事業の成果が公表されました
こども家庭庁は「こどもデータ連携」を進めています。「こどもデータ連携」とは、自治体の福祉・保健・教育・保育・医療関係等の各組織が分散して保有している子どもや家庭のデータを、個人情報の取扱いの適正を確保しながら、分野を超えて連携させることを通じて、情報を分析し、潜在的に支援の必要な子どもや家庭を早期に把握して支援につなげる取組です(取組の紹介は≪コチラ≫です。)。スタートは、2022年2月のデジタル庁にさかのぼります(デジタル庁の資料は≪コチラ≫です。)。
その取組の推進に向けて課題を整理するため、2023年度中に、公募に応じた全国14の市町で「こどもデータ連携実証事業」が行われました。14市町の所在と各市町が担当したテーマは下の※のとおりです。たとえば、宮崎県延岡市では、虐待・不登校・ヤングケアラー・貧困・産後うつ・発達障がいのテーマで実証事業が実施されました。また、14市町で収集されたデータ項目例は下の※※のとおりでした。子ども本人及び保護者の氏名や住所、生年月日のほか、学力・学習状況調査、保健室の利用頻度・来室理由、教育相談の利用状況、心の天気、生活保護、転出入の回数、虫歯の数なども対象となりました。その14市町による実証事業の成果報告書が、2024年3月29日付で、株式会社野村総合研究所からこども家庭庁宛に提出されました(成果報告書は≪コチラ≫です。)。
成果報告書25ページには、数多くの課題が挙げられています。個人情報に関する法律の整備の必要性、こどもデータ連携を市民に理解してもらうための丁寧な説明の必要性、データ項目選定の検討の必要性、各機関が保有するデータの標準化の必要性、今後の利用の拡張性を意識したデータベース構築の必要性、データ連携の即時性向上の必要性、互いに子どもとの異なる接点をもつ首長部局と教育委員会との連携体制構築の必要性、要対協未満の潜在層についてデータを組織的に活用するためのスキーム(制度的枠組み)の必要性、職員らの情報リテラシー向上の必要性などでした。越えなくてはならない課題がたくさんあることが示されました。それと同時に、「こどもデータ連携」が実現すると、全ての子どもと家庭に関する巨大なデータベースが誕生することになります。それは個人情報の究極的な集積というべきものです。そうすると利用価値が飛躍的に高まりますので、潜在的に支援を必要とする子どもや家庭の早期把握・児童虐待の予防への活用にとどまらず他の目的で濫用されることがないように万全の対策が必要と思われます。
※ 14市町と取扱テーマ
福島県会津美里町(学校不適応)、埼玉県美里町・川島町(虐待)、千葉県印西市(産後うつ、児童虐待)、神奈川県横須賀市(虐待、同居者の心身における健康状態が子どもの発達にどのような影響を与えるか)、神奈川県開成町(ヤングケアラー、貧困、虐待、引きこもり、産後うつ、発達障がい)、新潟県佐渡市(虐待、貧困、不登校、端部ケアラー、産後うつ、発達障がい)、岐阜県山県市(いじめ、不登校、発達障がい、問題行動)、大阪府和泉市(貧困、児童虐待)、宮崎県延岡市(虐待、不登校、ヤングケアラー、貧困、産後うつ、発達障がい)、埼玉県戸田市(不登校、貧困・虐待)、東京都昭島市(ヤングケアラー、身体的虐待)、兵庫県尼崎市(虐待等の課題を抱えていると見込まれる児童、発達障害〔疑いを含む〕等、就学における配慮・支援等が必要と見込まれる児童)、広島県府中町(虐待)、福岡県福岡市(虐待、ヤングケアラー)
※※ 14市町の実証で取得されたデータ項目の例
(出典 ㈱野村総合研究所「成果報告書」4ページ)