こども家庭庁の調査では、全国の市区町村の半数が「こども家庭センター」を設置しました
こども家庭庁は、2024年7月8日、同年5月1日時点における「こども家庭センター」の全国の市区町村での設置状況の調査結果を公表しました。設置済みは876自治体(50.3%)、未設置は865自治体(49.7%)でした(調査結果は≪コチラ≫です。)。
ところで「こども家庭センター」とは何でしょうか?わが国では法律の所管が省庁や省庁内の部署ごとに決まっており、別の部署がはみ出して所管することはありません。身近な例では、幼稚園は学校教育法にもとづき文科省が、保育所は児童福祉法にもとづき厚労省が所管します。このような所管の区分は、省庁に始まって都道府県や市区町村に及んでいます。そのため、省庁内の部署や自治体内の部署で縦の関係はありますが、横のつながりに欠けます。これが縦割り行政です。
これまでは、縦割り行政の壁により、市区町村の母子保健部門と児童福祉部門は別々に活動していました。前者は母子保健法にもとづく「子育て世代包括支援センター」、後者は児童福祉法にもとづく「子ども家庭総合支援拠点」です。そのため、妊産婦や乳幼児の保護者への対応と、虐待や貧困などの問題を抱えた家庭への対応は、関連があるのに、あまり連動できませんでした。しかし、両部門が連動しないことは児童虐待の対応に支障となっていました。そこで、2022年の児童福祉法・母子保健法の改正により、全国の市区町村に「こども家庭センター」を設置することとし、2024年4月1日から施行しました。ただし、設置は自治体の努力義務にとどめられました。(概要は≪コチラ≫をクリックして2~3ページをご覧ください。関連記事は≪コチラ≫です。)。
「こども家庭センター」は、両部門の機能は維持した上で、共通のセンター長と統括支援員を両部門の上に置き、両部門を一体的に運営できるようにします。こうすることによって、両部門の連携が図られ、全ての妊産婦、子育て世帯、子どもへの切れ目ない支援が図られます。この制度が機能すれば、支援の必要な家庭の見落としを防ぐことに威力を発揮する可能性が高まります。たとえば、0歳児の虐待死(心中死を除く)は2021年度では24人、うち月齢0ヶ月児は6人にのぼりましたが(その概要は≪コチラ≫です。)、こうした家庭を見落とすことなく適切に対応することが期待されます。
調査結果によると、人口1万人未満の自治体の設置割合は22%でした。小規模な自治体では予算や職員数に限りがあります。また自治体内の住民の顔が見える利点があり、現状でも行政の目が行き届くことが可能です。その一方、人口50万~100万人の自治体の設置割合は66.7%、100万人以上の自治体は81.8%でした。これがどのような事情によるのか明らかではありません。