3歳未満の子どもの里親等委託率2023年度38.3%を2029年度には75%に引き上げへ。長野県社会的養育推進計画(後期計画)の骨子案まとまる

長野県は、2020年6月、2020~29年度の10年間を計画期間とする長野県社会的養育推進計画を作りました(≪コチラ≫です。)。この計画の目的は、保護者のいない児童や保護者に監護させることが適当でない児童を含めた全ての子どもの最善の利益の実現に向けた支援の取組みを具体的に示すことにあります。そこでは、10年間を前期の5年間(2020~24年度)と後期の5年間(2025~29年度)に分け、前期最終年の2024年度に計画を見直して、後期の5年間に向けた計画を練り直すことにしていました。ですから、長野県は、後期5年間の計画を2024年度中に練り直すことになります。その骨子案が2024年9月にまとまりました(骨子案は≪コチラ≫です。)。

骨子案で里親がどのように検討されているかを見てみます。子どもの養育では、「家庭養育優先原則」が基本とされています(子どもの権利条約7条、9条、18条、20条、児童福祉法3条の2)。家庭の中で愛情豊かに慈しんで養育されることは何にもまして重要です。「家庭養育優先原則」は、骨子案36ページで「まずはこどもが生まれ、育てられている家庭で健やかに養育されるよう、父母らの養育を最大限支援した上で、父母らによる家庭での養育が困難または適当でない場合には、養子縁組や里親等による養育をこどもに保障していくことを原則とするものです。」と説明されています。この原則に立てば、乳児院や児童養護施設ではなく、家庭と同じ養育環境を満たす養子縁組や里親、ファミリーホームへの委託が原則となります。もっとも養子縁組は養親と子どもの間に新たな親子関係を作り出すので、簡単には成立しないかもしれません。そうすると主要な選択肢は里親とファミリーホームとなります。

ところで、里親とファミリーホームへの委託率(里親等委託率)については、こども家庭庁は2024年3月12日、2029年度までに乳幼児の里親等委託率を75%以上、学童期以降を50%以上とする数値目標を設定するよう策定要領を定め、都道府県宛に通知していました(関連記事は≪コチラ≫です。)。長野県の骨子案は、こども家庭庁の策定要領を踏まえ、具体的な里親等委託率の目標値を下表のとおりまとめました。たとえば、2023年度における3歳未満の子どもの里親等委託率は38.3%でしたが、これを2029年度には75%に引き上げます。現状から飛躍的に伸ばさないと達成できない高い目標値です。実現に向けて、長野県は、児相が里親・ファミリーホームへの委託を原則とすることを徹底する、里親のリクルートを推進する、短期支援事業など里親のさまざまなあり方を検討する、里親支援センターの設置促進など里親支援体制の構築などに取り組むとしています。長野県のみならず市町村を含めた官民一体の取組みが重要になります(里親支援センターの院長さんへのインタビュー記事は≪コチラ≫です。)。里親等委託率については全国の都道府県でも同様に検討されていることと考えられます。

(出典 長野県「長野県社会的養育推進計画(後期計画)骨子案」143ページ)