2025年度版「自殺対策白書」:自ら命を絶つ15~29歳の若者が3125人と高止まり

2024年のわが国の自殺者総数は2万0320人と、前年より1517人減少し、統計を取り始めた1978年以降で2番目に少ない人数となりました。とはいえ、年間自殺者数は依然として2万人を超えていることに加え、自殺死亡率は先進7か国(G7)の中で最悪です。さらに問題なのは、小中高生の自殺者数が529人となり、統計のある1980年以降で最多となったことです。このような中で政府は、2025年10月25日、2025年版の「自殺対策白書」を閣議決定しました(概要版は≪コチラ≫、若者に関する部分は≪コチラA≫≪コチラB≫です。)。

第1章は、わが国の自殺の現状です。警察庁の自殺統計原票のデータを基にして厚労省がまとめました。自殺統計原票には職業別の人数があり、「学生・生徒等」の2024年の自殺者数は1077人で、前年から58人増加しました。内訳は、小学生15人、中学生163人、高校生351人、大学生434人などでした。

第2章では、15歳~29歳までの若者の自殺の現状について特集を組んでいます。若者(15~29歳)の2024年の自殺者数は3125人でしたが、2020年以降3000人を超えて高止まり状態にあります。男女別にみると、男性は横ばい又は減少傾向なのに対し、女性は増加傾向です。若年女性では医薬品を用いた服毒自殺の割合が高くなりました。若年女性の自殺者は自殺未遂歴のある割合が20歳代から4割を超えて高く、30歳代前半までその傾向が続きます。

自殺未遂は、特に若年女性に大きな自殺のリスク因子となっていることが報告されています。自傷・自殺未遂の手段として最も多いものは「過量服薬」いわゆるオーバードーズです。これは、かぜ薬や咳(せき)止め薬などの市販薬を、かぜや咳の症状を抑えるためにではなく、感覚や気持ちに変化を起こすために大量に服用するもので、若者を中心に広がりを見せています。オーバードーズ対策については、販売時の対応のみならず、普及啓発等の対応を一体的に行っていく必要がある、としています。

大学生の自殺者数は、男女とも21歳を頂点とした山形となっており、女性の傾向が男性に近づいてきています。自殺の原因・動機は、男性では「学業不振」や「進路に関する悩み」といった学校関係が多く、女性では「病気の悩み・影響」といった健康問題が多くなっています。

若年有職者の自殺の原因・動機は、男女ともに「病気の悩み・影響」といった健康問題の割合が高く、「職場の人間関係」や「仕事疲れ」といった勤務問題の割合も高くなっています。また、20歳代の男性の有職者では、「負債(多重債務)」といった経済・生活問題の割合が高くなっています。