2023年度版犯罪白書・少年院入所者の6割超に身体的虐待を受けた経験あり

法務省は、2023年12月8日、2023年度版の犯罪白書を公表しました。注意すべき点は、少年の検挙人員は長らく大幅な減少が続いていましたが、2022年は19年ぶりに前年から増加したことです。少年による凶悪重大な事件、非行の動機が不可解な事件などが増加しており楽観視できる状況にはないとしています。

今回の白書では、小児期の逆境体験(Adverse Childhood Experiences)が非行少年に与える影響についての特別調査の結果が特集されています。白書によると、2021年に少年院に入所していた少年591人(男子526人、女子65人)を対象に、小児期に受けた両親の離婚、身体的虐待、心理的虐待、ネグレクト、性的虐待、家庭内暴力、家族の精神疾患やアルコール依存症などの逆境体験の有無を12項目に分けて調査しました。この方法は、1990年代にアメリカで始まった研究として知られ、該当項目が多いほど成人期の心身の健康に影響を及ぼすとされています。調査の結果、少年院入所者の61.0%が「家族から、殴る蹴るといった体の暴力を受けた」、43.8%が「家族から、心が傷つくような言葉を言われるといった精神的な暴力を受けた」、34.8%が「母親(義理の母親も含む)が、父親(義理の父親や母親の恋人も含む)から暴力を受けていた」と回答しました。少年院入所者では10項目で男子よりも女子の該当率が高く、保護観察処分少年では全項目で男子より女子の該当率が高いとの結果になりました。

白書は、「少年院在院者の中には、小児期に逆境体験を有する者が少なくなく、そうした体験に起因するトラウマを抱えている少年も一定数いることが推察される。」「非行の背景に小児期の逆境体験があり、様々な障害等を有する在院者の状態や行動を理解する上で、トラウマの影響を認識する視点は重要である。トラウマについて理解しないままかかわってしまうと、在院者が『分かってもらえない』という失望や怒りを感じたり、無理解によって叱責してしまうと、在院者が傷付き体験を思い出したりし、トラウマ反応がますます悪化する可能性も考えられる。」としています。このような報告を目にしますと、児童虐待の根絶は絶対に必要であると痛感いたします。

2023年度版犯罪白書は以下のとおりです。特別調査の特集は334ページ~、小児期逆境体験の分析結果は373ページ~です。

https://www.moj.go.jp/content/001407767.pdf