2022~2024年の3年間の妊産婦の自殺は162人にもなりました

東京都千代田区に本部を置く一般社団法人いのち支える自殺対策推進センターは、自殺の調査や支援を行う法人です。ところで、警察庁は、2022年1月から、女性の自殺者については、妊娠中あるいは産後1年以内に該当することが把握された場合には、その状況を自殺統計原票に記録することにしました。同センターは、この警察庁の自殺統計を基にして、日本産婦人科医会の協力を得て、2022~2024年の3年間に出産前後に自殺した女性の状況を調べ、2025年7月9日、その結果を「いのちを育む妊産婦の危機~自殺の実態と今後の課題」として公表しました(報告書は≪コチラ≫です。)。以下では、妊娠中と産後1年以内の方を合わせて妊産婦といいます。なお、厚労省は、1979年以降、妊産婦死亡の場合の妊産婦とは、妊娠中と妊娠終了後満42日未満の者と定義していますが、この報告書では警察庁の統計に基づき産後1年としています。

警察庁の2022~2024年の自殺統計を分析すると、妊娠中と産後1年以内に自殺した妊産婦は、2022年が65人、2023年が53人、2024年が44人で、3年間の合計では162人にもなりました。その3年間に自殺した50歳未満の女性は8804人でしたから、およそ2%にあたります。162人を時期によって分けると、妊娠中が45人、産後2ヶ月以内が26人、産後3ヶ月~1年以内が91人でした。妊娠中の自殺は20歳代前半が多く、出産後の自殺は40歳代前半が多いということも分かりました。

報告書は、妊産婦の自殺の原因・動機を次のようにまとめています。「妊娠中・産後とも、配偶者がいる場合には家庭問題が多かった。配偶者がいな場合は、配偶者がいる場合と比較して交際問題が多く、特に妊娠中でその傾向が顕著であった。」また、産後の自殺の原因・動機のうち、家庭問題の中では「子育ての悩み」が最も多く、健康問題の中では「病気の悩み・影響(うつ病)」が最多を占めました。報告書は、「以上の所見は、2022年~2024年の3年間のデータに基づくものである。継続的なデータの観察と、妊産婦の自殺対策の更なる推進が求められる。」としています。

妊産婦にこれだけの自殺があることからすると、自殺には至らないまでも相当の葛藤を抱えた妊産婦が多数存在しているのではないかと思われます。妊産婦が安心して子どもを育む家庭環境や社会環境を作っていかなければなりません。