自殺で亡くなった子どもたちの兆候は。一般社団法人の分析から

前回のポストで、「一般社団法人いのち支える自殺対策推進センター」が2025年6月23日に公表した「こどもの自殺の多角的な要因分析に関する調査研究」を取り上げました。その報告では、自殺した子どもが残した兆候にも分析が加えられています。分析に使用した資料は、教育委員会等の「児童生徒の事件等報告書」と「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針」に基づく「基本調査結果」及び「詳細調査報告書」から抽出した138事案です(該当部分は≪コチラ≫の51ページ)。

138事案には、のべ595個の兆候が認められました。1事案あたりにすると平均4.3項目です。報告書ではこれを39個に分類しました。39個に分類した全ての兆候のうち、最も該当事案数が多かったのは「直接的な自殺のほのめかし」で、39事案(28.3%)が該当しました。これは、希死念慮や自殺願望、自殺の具体的な方法・計画などを言葉で表出した場合をいいます。主に、友人、学校、家族がその兆候を知覚していました。このうち13事案では、子どもが亡くなる前の1週間以内にこの兆候が表出されていました。

138事案のうち10%以上が該当した兆候には、次のようなものがありました。「リストカット」は15事案、「自殺未遂」は14事案が該当しました。「長期間の欠席」は27事案、「単発的な欠席」は25事案、「遅刻・早退・欠課」は23事案が該当しました。「睡眠不調」は入眠困難、中途覚醒、過眠など睡眠に関する不調や変化が生じた場合をさしますが、18 事案が該当しました。「腹痛・吐き気・食欲不振」は消化器系の機能に不調が生じたもので、15事案が該当しました。「抑うつ状態」は29事案、「注意・集中困難」は16事案が該当しました。「感情発露」は、「涙があふれる」や「怒りを露にする」など感情の動きが行動や表情に表れたもので、15事案が該当しました。「無価値観」は、自身の存在や能力に対して否定的な認識をもち、価値のない存在だと表現したもので、14事案が該当しました。「対人関係」の悩みは30事案、「家族・家庭」の悩みは29事案、「将来・進路」の悩みは25事案、「学習・成績」の悩みは23事案、「学校生活」の悩みは18事案が該当しました。なお、今回の分析は、あくまで提供された資料の記載内容に基づくものであり、亡くなった子どもたちの兆候の全体像を示すものではないことに留意が必要である、と注意を促しています。