自傷・自殺未遂に関する国内初の報告書が公表されました。10歳代は全体の12.7%を占めました
2023年の全国の自殺者総数は2万人を超えています(関連記事は≪コチラ≫です。)。リスク要因の分析と適切な対策の構築は差し迫った重要な課題です。さて、全国の救命救急センターに救急搬送された自傷・自殺未遂の事例に関する国内初の報告書が、2024年9月10日、日本臨床救急医学会から公表されました(「自傷・自殺未遂レジストリJA-RSA2024年報告書」は≪コチラ≫です。)。
自傷・自殺未遂がその先の自殺の重要なリスク要因であることは、広く知られています。世界保健機関(WHO)は自傷・自殺未遂に関するデータの整備を各国に求めていますが、わが国にはデータ蓄積のシステムがなく、自傷・自殺未遂の実態の把握ができません。そのため、自傷・自殺未遂を経験した人への支援や自殺の予防に向けて改善が求められていました。このような状況を前にして、日本臨床救急医学会は、2022年12月1日から、救急搬送された自傷・自殺未遂者を登録するシステムの運用を国の予算の下で開始し、データを集めています。JA-RSAはそのデータの登録システムの略称です。全国の304の救命救急センターのうち57センターが参加し、2023年12月31日までの13ヶ月間に登録された事例は1987件となりました。この度の報告書ではこの1987件を分析しました。長野県内にある7つの救命救急センターからは3つが参加しています。
事例総数1987件のうち、女性は1254件、男性は733件でした。年代別では、20歳代が570件で最多となりました。10歳代の事例も少なくなく、総数は253件(全件の12.7%)、女性が180件、男性が73件となっています。来院時の希死念慮の有無については、ありが694件、なしが356件、不明が937件でした。退院時の希死念慮については、ありが400件、なしが924件、不明が663件でした。手段別では、男女ともに過剰服薬(オーバードーズ)が最も多く、女性が858件、男性が297件でした。こうした結果を分析して、自殺に追い込まれることのない社会を築いていくことにつなげていくことが望まれます。
(出典 日本臨床救急医学会外「自傷・自殺未遂レジストリJA-RSA2024年報告書」4ページ)
※希死念慮と自殺念慮 日本臨床救急医学会編「自殺未遂患者への対応 救急外来(ER)・救急科・救命救急センタースタッフのための手引き」では、死にたい気持ち(希死念慮・自殺念慮)を確認するとしており、希死念慮は死を願う気持ちのことだが自殺までは考えていない場合を指し、自殺念慮は自殺という能動的な行為で人生を終わらせようという考え方を指すとしています。救命救急センターにおいては、希死念慮と自殺念慮を明確に区分することは困難であり、少なくとも死を願う気持ちがあるとして希死念慮を確認したかどうか、またその結果を収集しています。そのため希死念慮ありには自殺念慮ありの場合も含まれるとしています(報告書6ページ)。