育英会調査:高校奨学生の家庭は、経済的貧困・時間貧困・社会的孤立
一般財団法人あしなが育英会は、2025年3月26日、「高校奨学生世帯の生活実態に関するアンケート調査」の結果を公表しました。アンケートの対象は、同育英会から高校奨学金(病気・災害・自死による遺児と親に障がいがある子どもが対象。月額3万円を給付)を受けている子どもの保護者3536人で、2334人から回答を得ました。同育英会が今回の調査の末に出した結論は、高校奨学生の保護者のa経済的貧困、b時間貧困、c社会的孤立の3つが明確になったことだとしています(調査結果は≪コチラ≫です。)。
【a経済的貧困】国民生活基礎調査(厚労省2023年)によれば、平均可処分所得は、全世帯が405.8万円、母子世帯が251.4万円でした。これに対し、今回の調査の回答者の平均可処分所得は187.8万円でした。全世帯のわずか46.3%にとどまり、母子世帯と比較しても63.6万円も低い、という結果でした。その背景に、配偶者が死別あるいは障害のため、回答者世帯の労働力は「一馬力」に限られ、その「一馬力」の保護者も非正規雇用の割合が高く、しかも病気・障害により就業が困難な世帯が多いからと分析しています。
【b時間貧困】国民生活時間調査(NHK放送文化研究所2020年)は、国民の1日の生活時間の使い方を全国的に調査しています。今回の回答者の82%は母親で、多くが40歳代、50歳代でしたので、これらの年代の母親に絞って、1日の生活時間の使い方を比較しました。すると、仕事や家事、通勤などの拘束時間は、一般の40歳代の母親に対し、回答者の40歳代の母親は、1日あたり3.4時間多いという結果でした。50歳代の母親も3.6時間多いという結果でした。一方、生命を維持するために必要な睡眠や食事などの時間は、一般の母親と比較して1日あたり、40歳代で1.8時間、50歳代では1.5時間少ないという結果でした。回答者は労働や家事に多くの時間をとられ、その反面、睡眠や食事、自由な時間が少ないことが分かりました。
【c社会的孤立】家計、家族関係、健康状態などの生活上の問題について、回答者が相談できる相手が誰かを尋ねました。すると、相談相手がいないとした回答者の割合は20.5%でした。内閣府の調査では、不安や悩みを相談する相手がいないと回答した人の割合は8.7%ですから、本調査では約2.4倍の数値を示しました。一方で上司、同僚などの仕事上の関係のある人に相談すると回答した割合は1割を下回り、社会の公器であるカウンセラー、行政の窓口、NPO などの団体と回答した割合は5%を下回りました。回答者は社会的に孤立し、親族が必ずしも相談相手として選ばれず、しかも親族・友人以外の社会との繋がりが弱いと分析しています。