福間香奈女流6冠:現状では、タイトルか妊娠かを選択しないといけない
福間香奈さん(旧姓里見香奈さん)は、日本将棋連盟に所属する女流棋士です。8つある女流棋戦のタイトルのうち6つを保持し、通算タイトル獲得は67を数える現役トップの女流棋士です。福間さんは、出産を控えた女流棋士がタイトル戦に出場することが難しい現在の将棋連盟の規定は人権上重大な問題を含んでいるとして将棋連盟に見直しの要望書を提出し、2025年12月10日記者会見を開きました。
発端は、昨年4月に妊娠が判明したことです。妊娠・出産に伴うタイトル戦の扱いに関する規定がなかったため、将棋連盟と協議を重ねつつ、昨年12月の出産前後は休場し、挑戦者だった一部の対局は不戦敗となりました。将棋連盟は2025年4月、女流棋士のタイトル戦出場に関して「妊娠している場合は、出産予定日を基準とした産前6週間から産後8週間までの期間と、番勝負の日程が一部でも重複する場合、対局者の変更を行う。」との規定を設けました。この規定によれば、タイトル戦の日程と産前産後の14週間の期間とが1日でも重なると、タイトル保持者はタイトルを当然に失い、挑戦者はタイトル戦に出場することができなくなります。タイトル戦の日程の変更などの対処はとられません。
福間さんは、「現在の規定では、妊娠してしまったらタイトルか出産かを選択しなければならず、どちらか一方を諦めなければいけない。」「妊娠による体調不良で長距離移動などが困難になり、本来なら喜ばしいはずの妊娠を素直に喜べず、当時はどうしようもなく苦しかった。」その後、将棋連盟から妊娠・出産について意見を聞かれたことから、様々な要望をしたものの、今春に将棋連盟から伝えられた内容には、福間さんの要望は受け入れられなかったと感じたといい、その時の気持ちについて「第二子を持つことは無理と、絶望的な気持ちになった。」「後進の女流棋士に将棋界を盛り上げてほしいが、未来ある少女や女流棋士が、この先複数のタイトルを獲得したとしても、どちらか一方を諦めなければいけない状況で未来に不安がある。」「申し入れをすることで、産休・育休についての議論がさらに活発化することを希望している。」等と語りました。
将棋連盟は「専門家の見解を参考に、従来の規定の調整条項を見直したうえで、より柔軟に当事者の意思に沿った対応が行える仕組みを検討している。」と発表しました。タイトル戦と妊娠、出産が両立できる仕組みができるよう期待されます。
