日本の子どもは身体的には健康だが、精神的幸福度は低い
ユニセフ(国連児童基金)は、2025年5月14日、経済協力開発機構(OECD)及び欧州連合(EU)に加盟する43か国に住む子どもの幸福度を調査した報告書を公表しました。データが十分に集まらなかった米国など7か国を除く36か国が対象となりました。日本の子どもの幸福度の総合順位は36か国中14位で、38か国中20位だった5年前の2020年調査よりも順位を6つ上げました。総合順位は首位オランダ、2位デンマーク、3位フランスでした(報告書は≪コチラ≫です。)。
幸福度の調査は「身体的健康」と「精神的幸福度」、「スキル」の3つの分野で測られます。※のとおり、各分野につき2つの指標で判定します。日本の子どもは「身体的健康」は前回と同じく1位で、「スキル」は前回よりも順位を上げて12位でした。これに対し、「精神的幸福度」は前回より5つ順位を上げたものの32位と下位に低迷しました。これは、生活にある程度満足している子どもの割合が増えて各国の平均とほぼ同じ水準になった一方で、子どもの自殺率が上がって4番目に高くなったためです。
ユニセフのコメントがあります。「総合順位表の中ほどに位置する日本は、一見平均的な国のように見えるかもしれません。しかし、日本は両極端な結果が混在する『パラドックス』の国でもあります。身体的健康で常に1位を維持していることは、この国には並外れた能力と資源、そして適切に機能する制度があることを証明しています。また、日本はコロナ前の2018年以降、生活満足度の平均値が向上した唯一の国であり、基礎学力が向上した3カ国の一つでした。このことから、日本は新型コロナウイルス感染症の危機管理に成功したまれな国の一つであったとも言えるでしょう。しかし、この好結果の陰には、日本ではまだ解決できていない重大な問題が潜んでいます。若者(15~19歳)の自殺率は、2018年の10万人当たり7.4人から2022年には10.4人に増加しています。これは、高所得国平均の6.24人のほぼ2倍です。自殺は心の病の最も深刻な結果であり、その発生率は25%増えています。日本には、その卓越した能力を活用して、どのように国民のメンタルヘルスを改善する方法を見出すことができるのか、という課題が残されています。」