文科省:子どもの自殺の背景調査の指針の改定案を有識者会議に示しました

文科省は、子どもの自殺に至る過程を丁寧に探ることによって初めて自殺に追い込まれる心理の解明や適切な再発防止策を打ち立てることが可能になるとして、2014年7月、「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針(改訂版)」を策定しました(以下、現行指針といいます。)。現行指針は、子どもの自殺または自殺が疑われる死亡事案を学校が認知したときは速やかに自殺の背景調査に着手すること、背景調査は基本調査と詳細調査から構成されること、詳細調査は中立的な外部専門家が参画した調査組織によって実施されること、などについて説明しています(現行指針は≪コチラ≫です。)。

ところが、2024年の小中高生の自殺者数は529人となり、過去最多を更新して極めて深刻な事態です。また、現行指針による調査についての遺族への説明が不十分で、調査が長期化してしまっていること、調査における共通様式が定まっていないために調査内容にばらつきが生じていること、詳細調査についての制度説明の実施状況及び詳細調査に移行していない理由について学校が遺族に説明した件数が全体の約6割に留まっていること(2023年度。397件中、説明を行ったのは238件=59.9%)、詳細調査に移行した件数が全体の約1割にとどまっていること(2023年度。397件中、詳細調査を実施したのは32件=8.1%)などの課題が指摘されていました。さらに、2014年の現行指針から10年以上が経過しました。文科省は、これらの事情を踏まえて現行指針を見直すことにし、2025年10月15日に開催された有識者会議(児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議)に、子どもの自殺に関する背景調査についての指針の改訂案を示しました(改定案の概要は≪コチラ≫、成案は≪コチラ≫です。)。

改訂案では、背景調査を円滑に進めるための学校の基本的姿勢や平常時からの備えを明示した外、基本調査・詳細調査における調査事項を整理し、基本調査の様式を作成しました。また、遺族への説明の確実な実施を学校に求め、背景調査の内容などを記載した遺族への説明書の様式も作成しました。遺族の希望がある場合に確実に詳細調査を実施するため、詳細調査の意向確認を行うための意向確認書の様式も作成しました。体罰・不適切な指導が背景に疑われる自殺事案の調査組織の中立性・公平性を確保する必要性が高い場合は、弁護士や精神科医、学識経験者らによる第三者委員会方式での実施を検討する必要があり、職能団体や大学、学会に利害関係のない公平・中立の専門家の推薦を依頼することを提案しています。文科省は、近日中にパブリックコメントを実施したうえで年内にも現行指針を改訂する予定です。