文科省は、「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」を改訂しました

「いじめ防止対策推進法」が国会で成立したのは2013年6月28日でした。滋賀県大津市の中学2年生が同級生3人からのいじめを苦に2011年10月11日に自宅マンションから飛び降り自殺した件で、中学校と市教育委員会の隠ぺいや責任逃れが大きく報道されたことがきっかけでした。

その法律の28条に「重大事態」の規定があります。重大事態とは、いじめの中でも特に深刻ないじめを指します。法律では、いじめによって、子どもの生命、心身又は財産に重大な被害が生じたり、子どもが相当期間学校を欠席することを余儀なくされたりしている疑いがあると認められたとき、とされています。こうした場合には、学校は調査機関を設置して調査を行い、当該子どもや親に情報を提供するなどの責務を負います。文科省は重大事態の調査に役立つように、2017年3月、「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」を作りました。ところが、重大事態の発生件数は増加しています。ちなみに、2022年度における重大事態の全国での発生件数は923件で、前年度比30.7%の増加でした(関連記事は≪コチラ≫です。)。また、法律やガイドラインに則った対応ができないケースもありました。そこで、文科省はガイドラインの改定を行い、2024年8月30日、これを全国の教育委員会等の学校関係者に通知しました(通知は≪コチラ≫、改訂版のガイドラインは≪コチラ≫です。)。

改訂点はいくつもあります。いずれも重要な改訂です。その中でも重要と思われるのは、第三者の専門家が調査するべきケースを具体化し、該当例を示したことです。そのようなケースとしては、子どもが自殺又は自殺が疑われる重大事態・事案が複雑で詳細に事実関係を明らかにすることが難しい重大事態・学校と保護者との間に不信感が生まれている重大事態を挙げています。専門家の具体例としては、弁護士、医師、学識経験者、心理・福祉の専門家等を例示しました。ただし、スクールロイヤーや顧問弁護士、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーは第三者性に疑義が生じうるので別の第三者を確保することを薦めています。