政府は孤独・孤立問題の重点計画を改訂。児童館やフリースペース、子ども食堂などの居場所づくりを

「孤独・孤立対策推進法」という法律があります。社会での孤独や孤立をめぐる多くの問題に対処するため2023年5月に制定され、2024年4月1日に施行されました。近年、単身世帯の増加、少子高齢化、過疎化、地域組織の衰退、インターネットの普及、ワーキングプアの増加、非正規労働などの働き方の多様化などの社会構造の変化が急激に進んでいます。これにより家族とのつながり、地域とのつながり、会社とのつながりなど、人と人とのつながりが薄くなり、誰もが孤独・孤立に陥りやすくなっています。加えて、コロナ禍によって人と人との接触機会の減少が長期化し、孤独・孤立が顕在化・深刻化しました。今後さらに、単身世帯や単身高齢世帯の増加が見込まれます。こうして、この法律が作られました。政府の「孤独・孤立対策推進本部」は、同法8条1項の条項に基づき、2024年6月11日、孤独・孤立対策重点計画を作りました。この重点計画は、2025年5月27日に改訂されました(概要版は≪コチラ≫、全体版は≪コチラ≫です。)。改訂された重点計画全体版の4ページの「孤独・孤立状態の予防を目指した取組強化」の項目中に、子どもの自殺と成人の孤立死のことが述べられています。

2024年の小中高生の自殺者数は過去最多となり、特に女子中高生の自殺者数が増加し、10歳代の女性は他の年齢層と比べても高い増加率となっている事実は重大です。子ども・若者の自殺を含めた自殺の問題は、社会全体の問題です。こうした認識の下で、児童館やフリースペース、子ども食堂といった家庭でも学校でもない多様な居場所づくりを進めることが重要です。また、そうした居場所を通じて子ども・若者の悩みを地域で受け止め、地域で教育や福祉に携わる人の「顔の見える関係」づくりをするなど、子ども・若者の孤独・孤立状態の予防に向けた取組を推進する、としています。

孤立死とは「誰にも看取られることなく死亡し、かつ、その遺体が一定期間の経過後に発見されるような死亡の態様」とされています。2024年の1年間に2万1856人が孤立死したと推計されています。今後、単身世帯や単身高齢世帯の増加により孤独・孤立のリスクを抱える者の増加が見込まれ、孤立死の増加が懸念されます。こうした課題に対しては、国と地方の行政が連携し、現役世代を含めた単身者が社会とのつながりを失い孤立死に至ることを予防する観点から、居場所・つながりづくりなどによって孤独・孤立状態の予防に取り組む、としています。

こうした取組の方向性を見ると、子どもであると成人であるとを問わず、居場所づくりやつながりづくりが今の社会に求められているといえます。