地域子育て相談機関。市町村の実施率は全国で17.0%でした

わが国社会では、核家族化や地域の関係の希薄化が進行しています。子育て世帯は孤立し、子育てに不安や負担感をもっていることが少なくありません。このような子育て世帯は地域や必要な支援者とつながりにくい実態があります。よって、子どもの安全や健全な発達を図るため、子育て世帯の身近に子育てにまつわる相談ができる相談機関を整備することが不可欠と考えられました。こうした立法理由から、2022年の児童福祉法改正により、市町村は「地域子育て相談機関」の整備に努めなければならないこととなり、その改正法は2024年4月から施行されました(同法10条の3)。

地域子育て相談機関は、子育て世帯にとって敷居が低く、物理的にも近距離にあることが求められます。特に、子育て世帯の中には、行政機関であるこども家庭センターに相談することへの抵抗感もありうるので、こども家庭センターを補完することを想定しています。これらの要請から、具体的な場所は、保育所、認定こども園、幼稚園、地域子育て支援拠点事業などの施設・事業を行う場に置くことを想定していますが、民間委託も可能です。また、中学校区に1ヶ所を目安に設定することを原則としつつ、地域の実情に応じて整備することが望ましいとしています。

株式会社野村総合研究所は地域子育て相談機関の実施状況等を調査し、2025年3月、「地域子育て相談機関の在り方に関する調査研究」の報告書を公表しました。調査は、こども家庭庁からの助成を受けて実施されました。アンケート調査では、全国自治体1741のうち1006から回答がありました(報告書は≪コチラ≫です。)。

地域子育て相談機関を「設置している」自治体は17.0%、「設置に向けて準備を行っている」自治体は約20%でした。設置しない理由に関し、「既存の施設・機関・事業で子育て家庭のニーズを満たせているため」を挙げる自治体は39.4%であり、子育て家庭のニーズは満たされているという認識があります。報告書は、制度の趣旨が伝わっていない自治体は多く、制度の趣旨を周知する必要があると指摘しています。

地域子育て相談機関の設置数は、「1施設」が約50%、「中学校区数と同じ区域設定にしている」自治体は約30%でした。課題は、「自治体内の人員の確保」が最 大で55.1%、次いで、「相談の質の確保・向上」が40.8%、「自治体内における地域子育て相談機関の業務内容・意義の理解や周知」が39.5%でした。相談員になりうる資格や資質をもつ人の確保が大きな課題といえそうです。