司法面接(代表者聴取ともいいます)とは何ですか?
子どもが犯罪の被害者や目撃者だった場合、これまで事情聴取はどうやっていたでしょうか。まず警察が保護者を通じて子どもを何度か呼び出して繰り返し質問します。次は検察が質問します。裁判になれば、裁判官が公開法廷で質問します。児童虐待事件では児相も事情を聴きます。こうした成人と同様の方法による事情聴取にはいくつも問題がありました。
アメリカでは、1980年代から司法面接が採用されました。筆者は1998年にロサンゼルスで司法面接の現場を見学する機会を得ました。司法面接室は壁で二部屋に仕切られ、壁には大きなマジックミラーが張られています。その向こう側ではインタヴューアーが子どもをあやしながらさり気なく優しく聴きだしていました。そこには一般家庭のようにソファやおもちゃがあり、花が飾ってあります。マジックミラーの手前では裁判官・検察官・弁護人が窓越しで見て、この子の証言は信用できるかなどと話し合っていました。ポイントは2点と教えられました。①一つは、子どもの気持ちや心情を汲み取って時間をかけて丁寧に聴きだす特別のトレーニングを受けたインタヴューアーが担当することです。子どもは未熟で、暗示や誘導の影響を受けやすい。ですから、子どものことを理解しない大人が暗示的・誘導的な事情聴取をしたのでは、子どもの記憶や証言は変容され汚染されてしまいます。②もう一つは、聴取は一回で終わりにすることです。子どもが途中で疲労し飽きてしまった場合は、その時点で中断し次の機会に続行することはあります。しかし、同じ内容の質問を警察や検察が何回かにわたって繰り返して尋ねることはしません。何故でしょうか。聴取すれば、子どもはその度に過去の忌まわしい記憶を呼び戻さなければなりません。それは子どもに苦痛を与え二次被害を加えることに外ならないからです。
わが国では2015年ころから司法面接により子どもから聴取する取組みが一部で始まりました。警察・検察・児相の関係機関が事前協議を行った上、関係機関の代表者が聴取を行います。そのため代表者聴取の名称がつけられました。この制度が、2023年の改正により、刑事訴訟法321条の3に新たに導入され、同年12月15日から施行されました。性犯罪や児童福祉法違反の被害者の子どもから司法面接的手法を用いて聴取した様子を記録した録音・録画は、一定の要件の下で証拠にすることができるという内容です。
一方で、課題も指摘されています。司法面接的手法といっても明確な指標はありません。実務上では、司法面接とは名ばかりの従来どおりの事情聴取も散見されるようです。また、代表者聴取として検察官が担当することが多いようですが、有罪立証を職務とする検察官は司法面接になじまないのではないか、児童福祉・心理に精通した中立的主体が担当するべきであるという意見もあります。