厚労省:2024年度の決算では、病院の半数が赤字

病院は、私たちや子どもたちの命と健康を守る必要不可欠の社会インフラです。ところが、病院の経営状況については、国公私立大学病院(81病院)の2024年度の経常収支が508億円の赤字であり、その赤字が拡大していることが全国医学部長病院長会議から公表されたり(関連記事は≪コチラ≫です。)、自治体病院の9割が赤字であることが全国自治体病院協議会から公表されたりするなど(資料は≪コチラ≫です。)、深刻な問題となっています。

そうしたなかで、厚労省は、2025年10月27日に開催された社会保障審議会・医療部会の会議に、「医療法人の経営状況(R7.8月末時点速報版)」を提出しました。その資料は、2025年8月末時点で各医療法人から厚労省宛に報告された2024年度の決算を集計したものです。それによると、病院を運営する医療法人の半数が2024年度の決算において赤字であることが明らかになりました。政府の正式な公表資料によって病院の経営難が進行していることが浮き彫りにされました(資料は≪コチラ≫です。)。

その資料によると、2098病院のうち49.8%の病院の経常収支が赤字でした。2023年度の赤字病院は41.5%でしたから、赤字病院は1年で約8ポイント増え、病院の経営状況はより悪化していました。病院の本業である医業収支だけで見ると、59.7%の病院が赤字でした。

医療法人である診療所の経常収支も公表されました。有床診療所1307施設のうち40.8%の経常収支が赤字でした。2023年度に赤字の有床診療所は38.9%でしたから、赤字の有床診療所は1年で約2ポイント増えました。医業収支だけで見ると、50.6%が赤字でした。

また、無床診療所2万0574施設のうち34.4%の経常収支が赤字でした。2023年度に赤字の無床診療所は25.4%でしたから、赤字の無床診療所は1年で約9ポイント増えました。医業収支だけで見ると、40.8%が赤字でした。

これらの収支状況からすると、現行の診療報酬の水準では医療法人の正常な運営が成り立たないことを示している、といって差し支えありません。日本医師会の担当者は、このままだと患者や国民を守る地域医療の崩壊につながるとし、早期の補助金とコスト増に見合った診療報酬の期中改訂を緊急かつ最大限に行うことが必要と強調しています。もっとも、同じ会議に、厚労省は、「医療機関の業務効率化・職場環境改善の推進に関する論点」という資料を提出していますので(資料は≪コチラ≫です。)、医療機関の現状に見合った議論が深められることが求められます。