冬の専門職研修会のご報告


2025年2月22日(土)午前10~12時、児童心理治療施設に入所する子どもたちを多角的に知る冬の専門職研修会を開催しました。パネリストに、あさひ学園所長浦野昌志さん(会員)、医師今井淳子さん、あさひ分校教諭丸山直子さん(会員)の3名をお迎えし、それぞれの立場からのお話に耳を傾けました。会場参加は12名、Zoom参加は28名でした。
浦野昌志さんは「虐待を受けた子どもたちの生きづらさ~児童心理治療施設の現状から」のテーマで、施設誕生の背景・情緒障害ケアから被虐待ケアへの役割の変遷・被虐待児の実際などを話されました。かつて被虐待児が集団化して攻撃的になったとき、小集団化を図るとともにサッカーの試合観戦や買い物などで大人との良い時間を作りました。また、子どもの就寝前に今日はどんな日だった?声を荒げたのは何故だったかな?などと職員が話すようにしました。やがて子どもの表情が豊かで柔らかになってきました。ただ、不利益を受けたと感じると攻撃に出るところは変わりなく、虐待によるダメージの大きさと、そこから回復することの難しさを感じるとのことです。
今井淳子さんは「あさひ学園は何をしているか~医師の立場より」のテーマで、施設の子どもや家庭について話されました。この施設には、家や学校で「関わり」を持つことが難しい子どもが生活しているといいます。子どもの家庭は年々脆弱になっていて、子どもは普通の生活を知らず、普通のSOSが出せず、自分の思いを適切に表出する手段を知りません。しかし、世の中を生きていかなくてはなりません。そのために、頼れる大人との出会い、世の中に通用するスキルの獲得、自分の帰るところに挑戦をしてゆくことをこの施設で学べるようにしたいといいます。
丸山直子さんは「あさひ分校の教育」のテーマで、子どもたちの様子や教育について話されました。教育の方法は、子ども本人と契約したプログラムを作成し、スモールステップでの引き上げを図っていくこと、といいます。教育の内容は、通常教育に加えて3つの柱を立てます(ソーシャルスキルトレーニング〔SST〕・感情整理シートを使っての感情の整理・ミーティング)。たとえば、子どもが「死ね、ばばぁ」と言ったとき、そう言われたら悲しいから止めようという従来の指導だと、子どもは自分を否定されたなどと苛立ってしまいがちです。そこで、それだけ嫌だったんだねと気持ちを受けとめつつ、「チクチク言葉」を「あったか言葉」に変えようと、ゲーム感覚的に言葉の使い方のルールを守ろうとお誘いし、本人の個性や道徳心から離れた展開に持っていくSSTの方法は有効と思われたそうです。
それぞれのお立場から貴重なお話をお聞きする研修会となりました。