全国知事会アンケート:全国学力テストの公表方式に弊害を懸念する知事も
小学6年生と中学3年生を対象とした文科省の2025年度全国学力テスト(全国学力・学習状況調査)が2025年4月17日に実施されました。国語、算数・数学、理科の3教科を筆記形式で実施し、中学理科のみコンピューター使用型に移行して14日から先行実施されました。全体の結果は7月に、都道府県別の結果は8月以降に公表されます。
全国学力テストが始まったのは2007年です。文科省は、全国学力テストの結果を、都道府県別・指定都市別は公表し、市町村別は非公表とするスタイルをとってきました。ところで、文科省が公表する都道府県別の平均正答率をメディアが大きく取り上げ、点数競争が顕著になっています。これに対しては、地域のランク付けや過度の競争を招くという意見があります。現在では、全国の知事からも、弊害を懸念する声が出されるようになってきています。
全国知事会は、2024年9月、全国の都道府県知事に対し、全国学力テストについてのアンケートを実施し、11月23日に結果を公表しました(結果は≪コチラ≫です。)。その中で、都道府県別の平均正答率などを公表する現行の方式について質問しました。この問いに対し、25人の知事(53%)は現行方式を支持しました。他方で、14人の知事(30%)は「全国の状況のみ公表」が望ましいと回答しました。具体的な意見には、「都市部と地方の教育資源の格差や家庭環境といったスタートラインを無視した単純比較がなされることで誤った認識を招きかねないため、原則非公表とすべき」や「都道府県の調査結果の公表は反響が大きく、全国との平均正答率との差や順位のみが独り歩きしており、教育現場の混乱を助長しかねない状況である」がありました。また、5人の知事は「その他」と回答し、その中には「都道府県の序列化や児童生徒を学力面のみではかる風潮を助長しており、検討がなされるべき」という意見がありました。
国連子どもの権利委員会の日本政府に対する勧告書は、わが国の過度に競争的な教育環境を検討するよう度々求めています。第3回勧告書(2010年)の71パラグラフでは、「委員会は、学業面での優秀な成果と子ども中心の能力促進とを結合させ、かつ、極端に競争的な環境によって引き起こされる悪影響を回避する目的で、締約国が学校制度および大学教育制度を再検討するよう勧告する。」としています。また、第4・5回勧告書(2019年)の39パラグラフのb項では、「ストレスの多い学校環境(過度に競争的なシステムを含む)から子どもを解放するための措置を強化すること。」としています。子どもを過度の競争にさらさない教育システムを目指す必要があります。