全国医学部長病院長会議:国公私立81大学病院の赤字は508億円に。危機的状況と訴える

一般社団法人全国医学部長病院長会議(AJMC)は、全国の国公私立82大学(国立42大学、公立8大学、私立31大学、防衛1大学)の医学部長、大学病院長を会員とする法人です。AJMCは、2025年9月30日、「令和6年度大学病院の経営状況」を公表し、全国の国公私立81大学病院の2024年度経常収支が508億円の赤字だったことを明らかにしました(プレスリリースは≪コチラ≫です。)。

調査は大学病院の本院が対象で、大学の設置主体別に2024年度の経常収支をみると、国立大学病院(42病院)は286億円の赤字、公立大学病院(8病院)は91億円の赤字、私立大学病院(31病院)は131億円の赤字でした。これらを合計すると、国公私立大学病院の全体(81病院)の経常収支は508億円の赤字となりました。収支は2022年度までは毎年度黒字でしたが、2023年度は168億円の赤字となりました。全体が赤字となるのは2023年度に続き2年連続で、しかも、赤字総額は前年度の約3倍(168億円⇒508億円)に上りました。赤字の病院は全体(81病院)の約7割にあたる57病院となり、赤字病院だけでみると、赤字の総額は936億円にもなりました。

国立大学病院(42病院)に限ってみると、2025年度はより一層厳しい状況になっています。経常収支が赤字の病院は、2024年度と比較して、25病院から8病院増えて33病院になり、2025年度の収支見込みは400億円の赤字を超える可能性があるとのことです。

2024年度の支出内容を調べると、黒字だった2022年度に比べ、医薬品費は14.4%の増、材料費は14.1%の増、給与費は7.0%の増、委託費は11.4%の増でした。人件費の増加、食材費や薬剤費、医療資材の価格高騰などが大きく影響しています。

AJMCは、「各大学病院の経営は、これまで以上に厳しい状況になっており、特に物価高騰および賃上げへの対応に伴い経営状況は悪化し、大学病院本来の機能を維持していくことが困難な状況に陥っており、さらにこのままでは病院閉鎖による地域医療崩壊となり国民の健康や福祉に影響が出る恐れがある。このような状況を改善するため、国(厚労省は診療、文科省は教育・研究)においては、緊急に財政支援を行うよう要望する。」と求めています。

大学病院は、医学生の教育・養成、高度な研究・診療のほかに、医師派遣など地域医療の支援を担い、また、難易度の高い手術や難病患者の診療などを受け持っています。大学病院は地域の拠点であり、子どもにとってなくてはならない病院です。国は、物価高騰や人件費の上昇に見合った診療報酬による支援を行うなどAJMCの要望を真摯に受け止めることが急務です。