児童相談所の一時保護施設は、都市部を中心に定員超過や入所期間の長期化などで切迫。こども家庭庁の統計から
一時保護施設は、児童福祉法33条1項に基づいて保護が必要な子どもを一時的に保護するための施設で、児童相談所に付設されています。ところが、近時、都市部を中心に定員超過や入所日数の長期化が目立っています。職務のストレスや過酷な労働環境から職員の不足も続いています。こども家庭庁の統計から一時保護施設の実情を見てみましょう(統計は≪コチラ≫の1521ページ以降)。
2023年度における東京都・神奈川県・千葉県の一時保護施設の平均入所率は100%を超過していました。具体的には、東京都119.5%、神奈川県118.3%、千葉県111.4%でした。なかには、千葉県の東上総児童相談所158.5%、東京都の江東児童相談所151.1%で、1.5倍を超える一時保護施設があります。指定市の児童相談所にも100%を超える一時保護施設があります。福岡市154.2%、横浜市114.2%(同市には3児相があり、そのうち西部児童相談所は138.8%、北部児童相談所は132.7%)、新潟市113.2%、さいたま市104.9%、相模原市100.1%でした。一時保護施設には被虐待児のみならず非行、発達障害、精神障害など多様な子どもが入所しています。定員超過の子どもが入所することにより、子どものストレスが増幅し、あるいはトラブル回避のため厳しい規律や管理的な処遇がなされるリスクもあります。
入所期間はどうでしょうか。児童福祉法では、一時保護の期間は原則として2ヶ月を超えてはならないとされています。ところが、子どもの入所日数は都市部を中心として長期化の傾向が見られます。2021年度における全国の平均入所日数は32.7日でしたが、千葉県75.5日、山形県54.7日、東京都45.0日でした。指定市では、千葉市60.6日、川崎市58.5日、横浜市53.9日、さいたま市48.8日でした。入所期間が短い県としては、鳥取県7.1日、愛媛県9.7日が目にとまります。これらに比べると都市部の入所期間は過度に長期であることが明らかで、子どもや家庭に弊害を及ぼしている可能性があります。ちなみに、長野県は25.6日でした。
児相が対応する虐待相談件数は毎年増加し、一時保護される子どもの数はおおむね右肩上がりで推移しています。2021年度における1日あたりの保護人員は2364人でしたが、この人数は2003年の1011人の2.3倍です。児相の業務は心理的な負担が大きく、採用活動をしても職員の確保が難しい状況になっています。こども家庭庁によると、2023年度に全国の児相で退職した児童福祉司の数は270人に上り、その83%が定年退職前の任意の退職でした(関連記事は≪コチラ≫です。)。
児相への予算を増額して職員の待遇改善を図るほか、社会全体で児相が置かれた状況への理解を深める取組みも必要です。