保護責任者遺棄致死事件で母親が逮捕される事案が発生しました

2023年6月8日、長野県松本市に住む25歳の母親が保護責任者遺棄致死の疑いで警察に逮捕されました。逮捕の容疑は、2023年3月24日、松本市内の自宅アパートで当時2歳の息子を石油がしみ込んだ布団の上に一定時間放置して炭化水素中毒と皮膚炎を起こさせて死亡させたとされています。母親は容疑を否認し、「ストーブを倒して灯油をこぼした。」と話しているそうです。

2歳の子どもが家庭内で不審な死をとげたことから児童虐待の疑いがもたれますが、具体的な背景事情や事案の内容は今後の警察による捜査や児童相談所による調査によって明らかにされていくと思われます。

※ 保護責任者遺棄致死罪とは

・ 老年・幼年・身体障害や病気のために扶助を必要とする者を遺棄した場合は、単純な「遺棄罪」が成立し、法定刑は1年以下の懲役です(刑法217条)。

  •  老年者・幼年者・身体障害者・病者を保護する責任のある者が、これらの者を遺棄した場合は、「保護責任者遺棄罪」が成立し、法定刑は3ヶ月以上5年以下の懲役です(刑法218条)。

母親は、子どもにとって保護責任者に当たります。

  •  さらに、遺棄した結果、保護の対象者を死亡させてしまった場合には「保護責任者遺棄致死罪」が成立し、いっそう重い刑に処せられます(刑法219条)。死の結果について故意があれば殺人罪となりますが、本罪ではその故意がありません。