保育園の倒産や休廃業、解散が増加。少子化・人手不足・物価高が業績を困難に。信用情報会社の分析から

企業信用調査の最大手である株式会社帝国データバンクは、2025年7月9日、2025年上半期(1~6月)に発生した保育園を運営する事業者の倒産や休廃業、解散件数が22件に上ったと公表しました。前年同期の13件を大幅に超えており、同社はこれまでで最多だった2024年の年間31件を上回り「通年で過去最多を更新する可能性がある」ほか、「保育施設の余剰感や園児獲得競争が厳しさを増しており、今後も淘汰が続くと予想される」とみています(サマリーは≪コチラ≫です。)。

保育園の倒産件数が増加している背景には、少子化の加速による乳幼児人口の減少や待機児童のピークアウトなどが大きく影響していることは確かですが、加えて保育士の人材難や物価高が保育事業の継続を困難にしていると考えられます。保育園の中には、今後さらに少子化傾向が続き、厳しさを増す保育業界の将来性に見切りをつけて、高齢者施設のほうに事業の比重を移しているケースも少なくないと見られています。

政府による幼児教育・保育の無償化が2019年10月スタートし、「こども誰でも通園制度」の2026年度の全国的実施により保育園利用の条件は整備されつつあります。その反面、待機児童数がゼロとなった自治体は9割近くになりました。このことは経営側からするとリスク要因でもあります。近時は保育施設数の増加や少子化の影響を背景に、入園希望する児童の獲得競争が激化しているといいます。加えて、保育士の人材確保難、給食などを提供する施設では食材価格や光熱費の高騰によるコスト高といった問題が発生しています。特に、中小の保育園では円滑な運営が困難となるケースが出始めています。

こども家庭庁による保育士の増員の手当てにもかかわらず、保育士の職業に対する人気の低迷により「なり手不足」が深刻化する保育士の採用難は年々深刻化しています。慢性的な人材不足によって適切な人員配置が困難となり、子どもの受け入れ定員数を制限せざるを得ない保育園や、保育士の離職を防ぐために給与水準の引き上げを実施して運営コストが増大したことで利益が圧迫される保育園が目立つといいます。

こうした状況を踏まえて、今後の見通しについて同社は、「これまで社会問題化していた待機児童問題は一部地域で解消しつつあるなか、保育施設の余剰感や園児獲得競争はより厳しさを増すとみられ、立地面やサービス内容で差別化が図れない運営事業者の淘汰は、今後も続くとみられる」としています。