人工的な香りで体調不良になった経験のある子どもは8%超。日本臨床環境医学会などの調査から
日常社会の中には、柔軟剤や香りつき合成洗剤、香りマイクロカプセルなどに含まれる人工的な香料があふれています。これらは化学物質からなっていますが、子どもに影響はないのでしょうか。日本臨床環境医学会(環境過敏症分科会)と、室内環境学会(環境過敏症分科会)は、2024年5月から、全国約1万人の子ども(小中学生約8000人、保育所の未就学児約2000人)の保護者を対象にして、インターネットを通じて調査をしました。調査は2026年3月まで継続される予定ですが、今回までの集計結果を元にして、2025年8月20日、「子どもの『香害』および環境過敏症状に関する実態調査」として公表され、関係者が記者会見を開き文部科学大臣に要望書を提出しました。
調査では、人工的な香りによる体調不良を経験したことがあるかを質問しました。体調不良の経験が「ある」という回答は856人(8.3%)からありました。症状としては、吐き気や頭痛などを経験したという子どもが多かったということです。また、経験があると回答した割合を学年別にみると、未就学児2.1%、小学校低学年6.8%、小学校高学年11.2%、中学生12.9%で、年齢が上がるにつれて割合が高くなる傾向がみられました。さらに、どこで経験したかを質問したところ、「園や学校」という答えが最も多く、香りが原因で登園や登校を嫌がるケースもあったということです。
最近よく耳にする「香害」とは、香りそのものというより、揮発性の人工化学香料によって化学物質過敏症に似た症状が引き起こされる現象をいいます。とくに閉鎖された教室では症状が深刻化しやすく、多くは学校内で発生しているという指摘があります。香害によって学習環境が損なわれている可能性もあります。関係者は、全国的な実態調査の実施、学校現場向けの啓発活動の強化、子どもたちの学習環境を守るための予防策を訴えています。一方で、メーカー側は、企業秘密を理由に香り成分が何なのかを開示しようとせず、安全性を確認しているなどという報道もあります。
香りを楽しむ文化は豊かといえます。しかしその一方で、知らずしらずに子どもたちの健康や学びを阻害する要因にもなりかねません。子どもたちが安心して学び、過ごせる環境を守るために、全国規模での実態把握と、行政・学校・家庭・企業の協働による対策が求められています。