一時保護期間が長くなる傾向があります。一時保護の課題は?

株式会社NTTデータ経営研究所は、2025年3月、「一時保護の実態と在り方に関する調査研究」の報告書を公表しました。児相や施設への調査のほか子どもから聴取をして課題を探りました。取りあげた課題は、一時保護の長期化、子どもの権利擁護、個別的ケア、委託一時保護の4点です。調査はこども家庭庁からの助成により実施されました(報告書は≪コチラ≫です。)。

一時保護の期間が長くなっています。2023年度の1件当たりの平均保護日数は34.0日で2020年度から3.7日延びました。一時保護期間が2ヶ月を超える件数の割合は18.9%で2020年度から4.5ポイント増えました。一時保護期間が2ヶ月を超える事例に限ると平均保護日数は124日でした。家庭復帰となった事例の平均保護日数は104.1日、施設・里親等措置となった事例では143.9日でした。

施設・里親等措置となった事例の長期化の要因を調べました。子どもの措置先・委託先の空きを待つのに時間を要すること。課題が複雑化し、適切な措置先や委託先の確保に時間を要すること。子どもの特性や問題行動が見られる場合や施設・里親不調の場合には、心理療法や支援計画策定、適切な措置先の確保が必要になりますが、その手続に時間を要することなど。「措置先の確保が円滑に進むよう、措置先の運営実態を把握し、措置先での職員配置や受け入れにおける課題を精査した上で、児童福祉施設等において受け入れが可能となるような仕組みの構築や、職員配置等の評価をしていくことが望まれる。」等としています。

家庭復帰となった事例の長期化の要因を調べました。保護者が子どもを引き取るための環境整備に時間を要すること。保護者とのコミュニケーションが難しいこと。離婚調停や親権争い等の係争がある場合は特に時間がかかること。子どもの非行行為や問題行動によって家庭養育が難しい場合や保護者による虐待があった場合、迅速な家庭復帰が難しいこと。保護者が引き取るための環境整備には人的資源・社会資源の活用が必要ですが、現状では十分でないこと。「25.3%の児童相談所において、一時保護中のこどもの支援方針を議論する場への保護者の同席・参加が可能となっていた。このような取組を通じて、家庭復帰に向け保護者が主体的になれるようなケース進行を実施することが有効ではないか。」等としています

他方で、長期化抑止に向けた児相内での取組も必要としています。入所時点で予め退所日を定め、逆算式に必要な会議や対応を行うためのスケジュールを策定することや、保護開始時点から子どもや保護者へのアセスメントを開始し、早い段階で見通しを立てたうえで、措置先・委託先との調整や児童福祉法28条の申立てを開始する児相がありました。多くの児相では、支援方針の策定・検討や徹底した進捗管理が実施されていました。