一時保護の司法審査手続が2025年6月1日から始まりました
全国の児相が対応した児童虐待相談対応件数は、2023年度は22万5509件で過去最多でした。児童虐待を受けた疑いのある子どもの全国における一時保護件数は、2022年度は2万9860件で、その件数は徐々に増加しています。
これまで一時保護は児相の権限と判断のみで行われ、2ヶ月を超えて一時保護するときに家裁の承認をその都度必要とするのを除き、裁判所の手続は一切不要でした。しかし、親権者の意思に反して分離されないことは子どもの権利であり、その権利が児相の権限と判断だけで制限されることは子どもの権利の侵害ではないかと指摘されてきました。国連・子どもの権利委員会の日本政府に対する勧告書もまた、司法審査を導入するよう求めていました。こうした意見を受けて、2022年6月8日、児童福祉法33条が改正され、親権者の同意がある場合等を除き、一時保護の開始から7日以内又は事前に、児童相談所長は地裁・家裁・簡裁のいずれかの裁判官に一時保護状の発付を請求しなければならないことになりました。
この司法審査の手続は、2025年6月1日から施行されました。児相は6月1日以降、一時保護状の請求手続を行うことになります。ただし、一時保護状を必要とするのは、親権者の同意がない場合に限られます。親権者の同意がある場合には裁判官によるチェックはありません。
もっとも、親権者の同意があったとしても、子ども自身の権利が侵害される危険はあります。ですから、子どもの権利を本気で尊重したといえるためには、親権者の同意の有無にかかわらず、全件について司法審査を導入する必要がありました。しかし、約3万件に達する一時保護の全件について司法審査を導入するのは、児相と裁判所の体制不備・人員不足などから困難とされたのでしょう。親権者の同意がない場合に限定して司法審査を導入した児童福祉法の改正は、子どもの権利の尊重の要請と児相・裁判所の体制不備・人員不足との妥協の結果ということができます(関連記事は≪コチラ≫です。)。