ラスト研修会~これからにつなぐ~ご報告

2026年2月28日 「ラスト研修会」を開催しました

当会は、今年度末をもって活動を縮小するにあたり、松本市との共催により、2026年2月28日(土)午後2時~5時、市内のMウィング3階大会議室において当会最後の研修会となる「ラスト研修会~これからにつなぐ~」を開催しました。

前半では、稲葉雄二さん(長野県立こども病院長、信州大学特任教授、当会会員)が「すべてのこどもが、健やかに育まれるために」のテーマで特別講演をしました。稲葉さんは、以前H医師とT医師との間で議論が交わされた「時代は、こどもにとって、よりよい環境に進んでいるのだろうか?」という点に着目して問題を深めていきました。【児童虐待と心中と貧困と自殺の現状】児童相談所での児童虐待相談対応件数は右肩上がりに増加していること。日本は、こどもの貧困率が18%と高く、貧困と孤立は共存し、困ったときに頼れる人がいる割合が最も低い国の一つであること。小中高生の自殺者数が高止まりしていること。【こどもの幸福度】OECD加盟の38ヶ国中の国際比較で、身体的健康は1位であるが、精神的満足度は37位であること。数学や読解力分野の学力は高いが、社会的スキルは低いこと。【こどもの発達と逆境体験】児童虐待や親の離別、深刻ないじめられ体験などのこども時代の逆境体験と心身の健康には関係があること。【レジリエンスとトラウマ・インフォームド・ケア(TIC)】TICとは、安全性の確保・信頼関係の構築・協働の強化の下でこどもの回復する力を認識し、それを高めていくものであり、全てのこどもが対象で、誰にでも知識によって可能となるものであること。【法整備と実践】わが国では児童虐待防止に関する法整備が進められてきたこと。【こどもの権利 守られる対象から権利の主体へ】アドボカシー(こどもの擁護・代弁・意見表明)活動が導入されたこと。【孤立の防止と支え合い・時間的・空間的連続性の中で】貧困の中で「助けて」といえない状況の原因には、社会への信頼のなさ(助けを求めてうまくいったためしがない)と自尊感情の低さ(自分は援助を受けるに値しない存在と思う)があること。【暴力の三角形と意識・文化の変容】直接的暴力・構造的暴力・文化的暴力が暴力の三角形であること。これらの諸点を語られた後、稲葉さんは、ユニセフの事務局次長が2025年6月に来日したときに語った「今は、ユニセフの歴史上前例がない、こどもにとって最悪の時代」という言葉を紹介して、こどもたちが健やかに育まれるために我々が力を尽くすことが重要として講演の結びとしました。

後半のシンポジウムでは、浦野昌志さん(松本あさひ学園、当会会員)をファシリテーターとして「困難にさらされているこどもたちに、今、わたしたちはなにができるか」のテーマについて各分野から発言がなされました。医療分野からは稲葉雄二さん、教育分野からは小山健史さん(上田市丸子中学校)、福祉分野からは樋口忠彦さん(松本児童園)、行政からは仲林啓さん(松本市)、司法分野からは上條剛さん(元弁護士、当会名誉会長)がそれぞれの立場から意見を述べました。以上をもってシンポジウムは終了し、ラスト研修会は幕を閉じました。62名の参加者がラスト研修会を最後まで見守ってくださいました。

皆さま、これまで長きにわたり当会に多大なるご支援、ご協力を賜りまことに心より感謝申し上げます。