ミニ情報 子どもの権利条約の「通報手続に関する選択議定書」とは、何ですか?

「選択議定書」とは、特定のある条約に付随する法律文書ですが、その条約本体とは別に作られる文書のことです。条約本体の批准とは別に、選択議定書も批准する必要があります。本体の条約とは別に締約国が批准することになりますので、「選択」の言葉が付いています。ですから、条約本体を批准していても、選択議定書は批准していないというケースがあり得ます(まさに、わが国がそうです。)。選択議定書を批准すると、その選択議定書に国内法的効力が生じます。

子どもの権利条約には、3つの選択議定書があります(ユニセフ版は≪コチラ≫です。)。①「武力紛争における子どもの関与に関する選択議定書」18歳未満の子どもを軍隊で直接戦闘に参加させないことを定めています。2002年に発効し、日本は2004年に批准しました。②「子どもの売買、子ども買春及び子どもポルノに関する選択議定書」子どもの人身売買や性的搾取の禁止をより強化しています。2002年に発効し、日本は2005年に批准しました。③「通報手続に関する選択議定書」2014年に発効しましたが、日本は未批准です。第三議定書ともいわれています。

「通報手続に関する選択議定書」とは何を定めた法律文書でしょうか。これは、子どもが国連・子どもの権利委員会に対し、子どもの権利条約に違反する国内の人権侵害の被害の救済を直接求めることを認めるものです。通報手続は、あらゆる国内的救済措置が尽くされた後、1年以内に国連・子どもの権利委員会宛に書面で申し立てます。わが国の場合は、最高裁判所で棄却判決が言い渡された後1年以内に通報することになります。個人通報があったときは、国連・子どもの権利委員会は調査の上で、当該政府に対し、救済措置をとるよう求めることなどができます。

わが国はこれを批准していません。国連・子どもの権利委員会は日本政府に対する第4・5回勧告書(2019年)・48パラグラフで批准を勧告していますが、日本政府は受け入れを拒否しています。ですから、国連機関に通報することができません。国連には末尾のとおり多くの国際人権条約があり、これらの条約には個人通報制度を認める選択議定書が付随しています。しかし、日本政府はいずれの選択議定書も批准していません。日本政府には自信がないのでしょうか。多くの市民団体や弁護士会はあらゆる機会に選択議定書を批准するよう政府に申し入れています。一日も早い批准が求められます。

※国際人権規約・女性差別撤廃条約・拷問禁止条約・障害者権利条約・人種差別撤廃条約・強制失踪条約・移住労働者権利条約(条約本体も未批准です)